不登校新聞

470号 2017/11/15

「生きづらさ」に「自己肯定感」など“便利な言葉がやっかい”説

2017年11月17日 16:44 by kito-shin
2017年11月17日 16:44 by kito-shin

連載「仮説なんですが…」vol.11

不登校を語るのに、私が意識して避けている言葉がある。

 まず「自己肯定感」。「生きづらさ」に「困り感」。「斜めの関係」や「サードプレイス」も使わない。「学び」「育ち」のような名詞化された動詞も気をつけている。フリースクールを始めて15年。いつのまにかずいぶん増えた。

 なんたって便利だ。使うだけで何か説明できた気になる。それがよくない。

 16歳の冬、「がんばれ」という言葉は使わないと決めた。20歳の夏には「いいです」をやめた。「がんばれ」も「いいです」も便利な言葉だ。言えばどうにかなるから、ついそればかり使う。

思考を狭める ありふれた用語

 同じ言葉でも状況によって意味合いは変わる。探せばしっくりくる表現がいくらでもある。そこで楽をすると語彙が減る。言葉は思考を規定する。語彙が減れば思考が狭まる。

 さらに言葉は内向する。よく使われる言葉ほど危ない。「居場所」「ありのまま」「安心」「自分らしさ」「多様性」「寄り添う」など、これまた便利でついつい使いすぎる。

 

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