不登校新聞

471号 2017/12/1

ビリギャルが「偏差値の上げ方」よりも伝えたかったこと【不登校経験者が聞く】

2017年11月29日 09:50 by shiko
2017年11月29日 09:50 by shiko

 『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(著・坪田信貴/2013年刊)は、不登校経験者にも共感が広がったノンフィクション作品だ(15年映画化)。『ビリギャル』の主人公になった小林さやかさんに「本当に伝えたかったこと」を不登校経験者が取材した。

――「ビリギャル」はサクセスストーリーだと思っていましたが、実際に本や映画を拝見したところ、このストーリーのテーマは「家族」だったように思いました。

 そうです。私は5人家族で、いろんなことがあった家族でした。まずは両親の不仲。お母さんのかばんには、いつも「離婚調停に勝つ方法」という本が入っていました。妹は不登校になったし、父から期待された弟も途中で挫折し家に帰ってこなくなった時期もありました。私と父の関係も悪く、学校の先生からは完全に問題児扱い。タバコが見つかったときは校長先生から「キミは人間のクズです」「わが校の恥です」って言われたりね。

 そんななかでも支えになったのが母です。「さやかほどすばらしい子はいないのよ」、ずっとそう言われて育ってきました。教育心理学では「ピグマリオン効果」とも言いますが、強烈に肯定してくれる人の存在が、自己肯定感の土台をつくります。その土台があったからこそ、受験を機に「自分の意思で人生を切りひらくこと」の意味を感じられたんだと思います。

結果よりもプロセスが大事

――不登校をすると自己肯定感が下がり「人生を切りひらこう」と自信を持つことが難しい気もします。

 「自信が持てるように」と努力をしたり、自信がなくて悩んだりする人もいますが、その必要はありません。自信は根拠がいらないものだからです。

 むしろワクワクできる目標やそういう大人に出会えることのほうが大切な気がします。学校に「行っている」「行ってない」は関係ありません。私は、「こんな大人になりたい」と思える大人は中学校、高校には一人もいませんでした。でも、恩師の坪田信貴先生に出会って未来に光を感じました。坪田先生は学校ではなく、塾の先生です。



 坪田先生が、私が受験を始めたころに言ってくれた言葉があります。

 君が一生懸命努力して、でも仮に慶應大学に落ちたとしたら「やっぱり」「ほら、どうせ無理だって言ったじゃん」と言われるだろう。でも、実際に慶應に合格したら「もともと頭がよかったんだね」と言われることになる。つまり、他人は結果からしか判断してくれない。「どれだけの努力をしてそこにたどり着いたか」は意外と見てくれないんだ。けれども、目標と向き合って「がんばれた」と、自分自身が知っていること、その経験こそが何よりも宝物になるよ、って。

 先生の言った通りでした。「ビリギャル」と言われるようになって、やっとその意味がよくわかりました。でも、正直そんなことはどうでもいいんです。結果を出そうと思うなかで自分と向き合えたからです。不登校も同じじゃないでしょうか。

自分と向き合う その時間こそ

 不登校になったとき、他人と自分を比べたり、「なんで私は」と考えたりした時間があったと思います。不登校になること自体は自分の意思ではなかったかもしれませんが、自分と向き合う時間があったならば、すごく意味があることです。人生において必然の出来事だったかもしれません。

 だから、あとはこれから先、自分にとっても「ワクワク」を見つけられるかどうか、です。そしてそのワクワクを「人のため」に活かすことができれば「不登校であった時間」がなお意味のある時間になりますよね。

――ありがとうございました。

■小林さやかさんプロフィール
(こばやし・さやか)「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」(著・坪田信貴)の主人公。現在は、フリーウエディングプランナーとしての活動や、中高生や親御さん向けに講演活動なども行なっている。

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