不登校新聞

475号 2018/2/1

精神科医が役に立つ時と 役に立たない時【児童精神科医の答え】

2018年02月06日 13:42 by kito-shin



【精神科医・高岡健さんへの質問】

高校1年生年齢の娘を持つ母親です。娘は中学1年生から不登校になりました。

学校に行ったり行かなかったりをくり返しながら、中学2年生の終わりごろには完全に行かなくなりました。それからしばらくして、娘が「外に出るのが怖い」と言いだし、「1日に何度も手洗いをする」といった行動を取るようになりました。

娘のためには、なんとかして病院に連れて行ったほうがいいのでしょうか?

【高岡健さんからの回答】

 病院へ連れて行く場合でも連れて行かない場合でも、はじめにすべきことは、娘さんが家庭を安全な場所だと感じられるように、発想を変えていくことです。そのためには、登校圧力をかぎりなくゼロに近づけ、学校へ行かないで暮らすのが当然と思えるような「家風」へと、切り替えることが前提になります。

家風の切り替えを

 家風の切り替えと言うと、なんだか抽象的に聞こえるかもしれませんが、それだけで強迫症状が少なくなっていく場合も、めずらしくありません。なぜなら、切り替えられた家風は、娘さんの気持ちに、ゆとりをもたらすからです。

 もちろん、登校圧力を減らし、家庭を安全な場所に変えたつもりでも、強迫症状が続く場合はあります。そういうときには、病院も役立ちます。やや専門的な治療法を別にすれば、たいていの場合は認知行動療法と薬物療法の組み合わせで、治療が行なわれるでしょう。その場合の治療のターゲットは、「外に出るのが怖い」という思考や、「1日に何度も手洗いをする」などの行動自体です。ここで大切なのは、何のために、そういった思考や行動を治療しようとするのかという点です。

 もちろん、それは学校へ行くためではなく、娘さんが楽しく生活できるようにするためです。たとえば、買い物を楽しむ、コンサートを楽しむ、料理を楽しむなど。そのための治療であることを、忘れてはいけません。

家風を切り換えないと

 では、登校圧力をそのままにして病院へ連れて行った場合は、どうでしょうか。きっと、娘さんは、学校へ戻るために治療を受けるのだと、悲壮な決意で臨むでしょう。あるいは、学校へ戻りたくないという自衛の気持ちから、暗に治療を拒否しようとするでしょう。

 いずれの場合でも、たんに「効果」が出にくいだけでなく、症状の悪化がみられたり、副作用が出現しやすくなることがしばしばです。だから、家風を変えずに「なんとかして病院に連れて行ったほうがいい」とは、とうてい言えません。

 つけくわえるなら、手洗い強迫や外出恐怖の背景に、ほかの疾患が隠れている場合もあります。ひとつは、幼少期からのこだわりや独特のコミュニケーションなどの(自閉スペクトラム症の)特徴が、見逃されている場合です。もう一つは、幻覚や妄想(らしきもの)が、断片的に混じっている場合です。こういったときには、まず母親であるあなただけが、病院へ相談のために訪れ、助言を求めるといいでしょう。

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