連載「決まり文句の研究」vol.8
「復帰への努力から逃げている」「自分から逃げてしまっている」「現実逃避している」……。
寝食を忘れてゲームや動画、そのほかインターネットなどに没頭しているわが子について、親御さんはよく「逃げている」と、こぼされます。親御さんだけでなく、当の本人もまた、往々にして「自分は逃げている」と語る場合があります。たしかに「ひきこもり状態イコール社会からの逃避」というイメージは社会全体を覆っているかのようです。
では「逃げる」とは何でしょうか。
たとえば、人間でも動物でも自然でも(今の)自分にはかなわない、自分を脅かすと感じた対象からは、誰もが逃げて身の安全を確保します。これに異論は出ないでしょう。私は、なぜ人がひきこもるのかと言えば「自分を脅かすものから逃げて心の安全を確保しているから」と説明できると考えています。「身の安全」も「心の安全」も、どちらも人にとって大切なものです。
心の安全は、いらない?
ところが、この「身の安全」と「心の安全」という一文字ちがうだけで、世間では受けとめ方が大きくちがってしまいます。
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