不登校新聞

485号 2018/7/1

不登校だと犯罪を起こしやすい? 東海道新幹線殺傷事件を考える

2018年07月03日 12:38 by shiko

【質問・読者

 先日、東海道新幹線のなかで刃物を持った男性が乗客を切りつけ、1人が死亡、2人が重傷を負うという事件が起きました。しかも容疑者は、中学生時代にいじめや両親の不仲により不登校だったという報道を見ました。被害にあわれた方のことを思うと胸が痛む一方で、不登校中の息子も同じことをしないか本当に不安です。そこで率直にお聞きします。やはり不登校だと「危ないこと」をしやすくなるのでしょうか?

【回答・児童精神科医 高岡健】

 いわゆる無差別殺傷事件のほとんどは、「自殺の裏返し」です。

 人間的なつながりが、すべて断ち切られてしまったと感じたとき、自殺へ向かうか、それとも無差別殺人へ向かうかの分岐は、偶然の理由に基づくというしかありません。つまり、どちらへも転びうるのです。

 では、不登校だと、人間的なつながりが、断ち切られてしまうものでしょうか。

 あなたは、すでによくわかっていらっしゃると思いますが、不登校によって、かえって強まるつながりもあります。あなたが不登校の意義を認め、ゆったりとエネルギーを蓄えられる安全な環境を、あなたの息子に提供しているなら、それは親子のつながりを強めるでしょう。

 逆に、あなたの信条に合わない息子を矯正しようとし、うまくいかなければ放り出すようだと、つながりが断ち切られるのも当然です。

 報道にもとづくかぎりでは、新幹線殺傷事件の容疑者は、中学でいじめを受けて不登校をし、家にいるときは食事をつくってもらえなかったそうです。

 また、職業訓練校を経て就職した愛媛県の工場でも社内いじめにあい、愛知県の実家へ戻ったものの、「親に殺されるから」という理由で家出をくり返していました。ちなみに、「容疑者の写真は実家にあるか?」と記者から尋ねられた父親は、「今はもうない。捨てた」と答えています。

 どこまで正確な報道なのかはわかりませんが、家庭はエネルギーを蓄えられるような場所ではなく、親子のつながりはほとんど断ち切られていたということだけは、たしかなようです。

無差別殺傷は自殺の裏返し

 そうであるならば、事件は不登校の延長上に起こったのではなく、人間的なつながりがなくなった先に生じた、自殺の裏返しとしての殺人だと考えられます。

 付け加えるなら、今回の事件では、容疑者の有する障害が事件と結びついたかのように受け取られる報道があり、外部からの指摘を受けた結果、報道の一部が削除されているようです。

 これまでのように、さんざん煽ったあと、「障害と事件は関係ありません」と、かたちだけ謝罪するのもどうかと思いますが、自主規制する姿勢も、私は好みません。障害を抱えた子どもは、生きにくさも抱えています。彼らに対し、不登校やひきこもりを許さない圧力が加われば、どんなに優しかった子どもでも「危ないこと」を起こすと、あえて言い切るべきでしょう。


■回答者・高岡健プロフィール

(たかおか・けん)1953年、徳島県生まれ。1979年、岐阜大学医学部卒業。岐阜赤十字病院精神科部長、岐阜大学准教授を経て、2015年より岐阜県立こども医療福祉センター発達精神医学研究所所長。日本児童青年精神医学会理事。少年事件の精神鑑定も数多く手がける。雑誌『精神医療』(批評社)編集委員。著書に『人格障害論の虚像』(雲母書房2003)、『引きこもりを恐れず』(ウェイツ2003)、『不登校・ひきこもりを生きる』(青灯社2011)など多数。共著に『不登校を解く』(共著:門眞一郎、滝川一廣/ミネルヴァ書房1998)、『時代病』(共著:吉本隆明/ウェイツ2005)、『殺し殺されることの彼方』(共著:芹沢俊介/雲母書房2004)など多数。

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