「自分を大切にすること」の意味を考えたことがあるのは、私だけではないと思います。自分を大切にするってとても難しいうえに、誰かに正解を聞くこともできません。でも、やっぱりとても大事で、考える意味があることだと、私は自分の経験を通して思います。
子どものころの私は「私がガマンすればいい」「私が何も言わないことで丸く収まるならそのほうがいい」と、いつも思っていました。誰かに心配をかけたり、誰かをイヤな思いにさせたりしたくなかったのです。しかし気をつかいすぎて自分を保てなくなっていき、小学6年のころ、学校に行くことができなくなりました。
家でひとり考え込むうちに、私は「私のことはいいから」と他人を優先するあまり、自分を大切にしてこなかったことに気がつきました。「他人ばかりを気にして、私は何をやってきたのだろう」と虚しさで胸がいっぱいになる日々が続きました。
でも、自分を責めてもどうにもなりませんでした。
むしろ、疲れたままの心はどんどん行き場がなくなっていきました。ボロボロになっていく自分を見ているうちにだんだんと「これ以上、自分を傷つけてもしょうがない」と感じるようになりました。だから、私は自分を傷つけるのをやめました。そして、代わりに自分を大切にする努力をしてみることにしたのです。
心のアンテナを
「自分を大切にする」という難題を目の前に、私が始めたことの一つは自分の心のアンテナを鈍感にすることでした。
学校に行っても、学校に行かなくても、安全地帯の家から出れば私の心は自然と固く過敏になりました。それはまわりの人の視線や感情をどうしても気にして、感じすぎてしまうからです。
そんなとき私は「鈍感、鈍感……」と自分に言い聞かせました。携帯のアンテナが徐々に減っていくみたいに、自分の心のアンテナを減らすようにイメージしていました。
最初のうちはうまくいかなくても何度か挑戦しているうちに、だんだんとまわりの人の視線が気にならなくなりました。きっとよけいな力が抜けて心が身軽になったことで、まわりの人や物をうまくかわせるようになったのだと思います。
「つねに100%でがんばらなくても、人からどんなふうに思われていても。自分を大切にしてあげられるなら、とりあえずそれでよいじゃないか」と自分のなかで割り切っていたことも、大きかったように思います。いろんなものをかわすことで、すべてを正面からまじめに受けとめなすぎないことで、私は自分を守り、大切にしてきました。
自分を大切にしようと思っても方法がわからないとき、よければぜひ一度「鈍感術」をお試しください。
この方法で少しでも心を軽くするお手伝いができたなら、とてもうれしいです。(不登校経験者/pn.富良野しおん)
読者コメント
tsuyokawa
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