不登校新聞

486号 2018/7/15

「学校は死刑台だった」今も“それせか”が当時を歌う理由

2018年07月15日 10:30 by motegiryoga

 今、10代・20代に熱く支持されるバンド「それでも世界が続くなら」。今年9月2日のライブ公演のチケットが開始5分で売り切れたこのバンドは、不登校、いじめ、虐待などをテーマにした曲を発信し続けている。楽曲の作詞作曲を手掛ける篠塚将行さんにお話をうかがった。

*****

――バンド「それでも世界が続くなら」の楽曲はメンバーの実体験をもとにしているとうかがいました。篠塚さんもいじめや不登校を経験されたのですか?

 小学1年生のときに、ある女の子が「○○菌」と言われて、めちゃくちゃからかわれていました。僕はその女の子と仲がよかったので、からかっている連中をとめたんです。そうしたら今度は僕がターゲットになりました。いじめている連中にとっては、かばったことで僕までもが「菌化」したということなのでしょう。

 初めて殴られたときに、殴り返せばよかったのかもしれません。だけど、僕は「耐える」という選択をしてしまったんです。そうすると、まわりからすれば「こいつ殴っても痛がらないぞ」となって、どんどんエスカレートしていきました。これは大人の世界にもあることだと思いますが、言い返せない人は「何をされてもいい人」というキャラになってしまい、サンドバックのようになっていくんです。

 小学校を卒業しても、同級生が同じ中学に入学したので、いじめは中学卒業まで続きました。

 今思えば、彼らは「上手」でしたね。誰からもわかるような場所で激しく殴る蹴る、ということはしないんです。あくまで「俺たちは友だち」という体裁で、その枠のなかで徹底的におとしめる。だから外部の人からはちょっと過激な「いじり」や「悪ノリ」に見えたと思います。たとえば、いじめている奴らは僕を遊びにも誘ってくるんです。外部からは「いっしょに遊んでるんだ」と思われる。だけど当然、僕に行かないという選択肢はありません。ものすごくイヤだけど、それでも行くしかないんです。

 自分自身、いまだにあれを「いじめ」とはっきり断定できないんです。あれは「いじめ」なのか「いじり」なのか、あいつらは友だちだったのかどうか、わからなくなるときがある。とはいえ、どう感じたかは受けた側が決めていいことです。悩まずに「イヤだった」という気持ちを大事にしていいんだ、と若い人には言いたいです。

学校や家族から“自分が消える”

――不登校になったのはいつごろですか?

 中学生になってからでした。

 ただ、家にずっといたわけでもないんです。学校にも家にも居場所がないから、親には内緒で、外をふらついてました。学校には「カゼで休みます」と自分で伝え、家族には学校に行くふりをして家を出るんです。学校では家にいることになっているし、家族のなかでは、学校に行っていることになっている。その時間だけ、みんなの意識のなかから本当の自分が消える感じがして、めちゃくちゃ自由な時間でした。
ただ、たまに泣けてくることはありましたね。「悲しい」という気持ちではなく、なんだかよくわからないけど体の奥のほうから涙が出てくるんです。それでも「何もガマンしなくていい時間」は自分にとって大切だったし、必要でした。 

 ちなみに、学校に電話するときは、ホームルームの時間をねらうのがオススメです。その時間はすべての先生が教室にいるから、用務員さんとかが電話に出てくれる。だから「今日休みます」って言いやすいんですよ(笑)。

 状況が少しずつ変わっていったのは、高校生のときにバンドを組んだことからでした。高校でも僕はバカにされていて、学校は行ったり行かなかったり。行っても音楽室でずっとギターやピアノを弾いていたんです。そんななか、同級生に「空気の読めない奴」がいました。そいつが、ずっとひとりだった僕をバンドに誘ってきたんです。最初は断っていたんですが、ついに折れて高校2年のときにバンドのメンバーになりました。

 バンドを続けたことで起きた一番大きな変化は、「僕がバカにされたら悲しんでくれる人」の存在に気づいたことです。「お前がバカにされてんの、すげーイヤだわ」っていう思いが、言葉にしなくてもひしひしと伝わってくる。そんな人が僕のそばにいる。それが何よりもうれしかったんです。そこから、今の自分がはじまっていると思います。

本当をそのまま

――曲づくりにおいて、篠塚さんがこだわっていることは?

 僕が大切にしていることは、曲を通して「本当のことを言う」ということです。いじめられていたときの気持ちや、自分を責めていたときの気持ちをそのまま曲にしています。たくさんの人に伝わるような音楽じゃないかもしれません。でも僕は、自分と同じ気持ちを持っている人が共感してくれれば、それでいいと思っているんです。

 だから今日のように、自分の音楽が誰かに伝わって、会いに来てくれるのは本当にうれしい。いつも無人島で救命信号をあげるみたいに「オレはここにいるよ、誰か気づいて」と思いながら歌っているんですが、気づいてくれたんだなって。小中学生時代の自分に、「いつかこんな日がくるよ」って伝えてあげたいぐらいですよ。

 もうひとつ、音楽を通して、いじめをしている奴らや「いじめられている側にも責任がある」と思ってるような奴らに「ふざけるな」って伝えたい、という思いもあるんです。

 やっぱり、僕はいじめが起きたり、それで苦しんでる人がたくさんいるっていうことがくやしいんですよ。いまだに、小学1年のときに女の子がバカにされていたことに納得がいってないんです。そうしたくやしさが僕の原動力になっています。

 よく「みんなちがってみんないい」とか言うけど、よくないですよ。殴られて、前歯を折られて、それでも「みんないい」なんて思えないじゃないですか。せっぱつまってない奴、苦しいところに立っていない奴の言葉はあてにならない。

 僕は本当に苦しかったとき、何も言葉にすることができなかった。でも今なら音楽を通して、「オレはイヤだったぞ」と伝えることができる。だから音楽を続けていられるんだと思います。

とりあえず会って話そうよ

――読者にメッセージをお願いします。

 親御さんは、とりあえずギターを買ってあげてください(笑)。家でもどこでも手軽に弾けますからね。あとは「学校へ行け」と言わないでほしいです。小中学生のころの僕にとって、学校という場所は「死刑台」だったんですよ。あそこに行くと自分が死んでしまうんです。もし子どもが「学校へ行きたくない」と言ったら、親御さんには学校から子どもを守ってあげてほしいです。

 それから、僕がきついときにほしかったのは上からのアドバイスではなく、隣りに座って、対等に話してくれる仲間でした。だから自分の意見を押しつけるようなことはしないでほしいです。なぜなら、みんな初心者だと思うからです。子どもは人生で初めての中学生。でも親も、人生で初めての「中学生の親」です。みんな未経験者だから、謙虚になって「自分の考え方はまちがっているかもしれない」と思ったほうがいいんじゃないでしょうか。

 最後に、この記事を読んでくれている若い人には……そうだな、「僕は君と話したいよ」と伝えたいです。きっと読者にもかつての僕のような思いをしている人がたくさんいると思うんです。だから「とりあえず会おうよ、会って話そうよ」と言いたいです。

――ありがとうございました。(聞き手・水口真衣、編集・茂手木涼岳)

■プロフィール
(しのづか・まさゆき)
1980年生まれ。2011年にロックバンド「それでも世界が続くなら」を結成。ボーカル、ギターを担当し、全楽曲の作詞作曲を行なう。


■バンド紹介「それでも世界が続くなら」
2011年に結成。メンバーの実体験をもとに、いじめや虐待などをテーマにした楽曲を数多く作成。10代~20代を中心に多くのファンを持つ。本年6月20日にベストアルバム「僕は音楽で殴り返したい」を発売。同年9月2日をもってバンドは活動休止予定。

■アルバム情報

○3rdミニアルバム「それでも世界が続くなら」/8月1日発売
○ベストアルバム「僕は音楽で殴り返したい」/発売中

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