連載「不登校50年証言プロジェクト」
今回のインタビューは、不登校といっても「ホームエデュケーション」という考えで、自分のお子さんの育ちを支えてきた母親である兼子和美さんに登場していただいた。このプロジェクトで、ホームエデュケーションでやってきたという人は初登場である。
ホームエデュケーションはホームスクーリングとも呼ばれ、学校やフリースクールなど、どこかに通うのでなく、家庭をベースに学び育つ方法である。
家のなかにずっといるイメージを持つ人も多いが、自分の趣味・関心をもったことを深めるために、図書館・博物館など社会資源を自由に活用し、旅に出たり、人に会ったり、何かを体験しに出かけたりしながら成長していくのである。日本では教育といえば学校教育がイメージされてしまうが、家庭でもたくさんの学びができる。読書すれば国語学習だし、絵を描けば美術だし、料理をすれば家庭科につながる。家庭で学んでいく方法も教育のひとつといえる。
諸外国では、ホームエデュケーションで育つことを公的に認めている国はかなりある。なかには、そういう家庭に公的資金を出している国もある。日本では、不登校が増加の一途をたどったが、学校へ行ってほしい、行かせたい観念が強く、実際、家庭でやっていてもホームエデュケーションという、家で育つことを積極的に選び、肯定的にやっていく親子は多くはない。
楽しくなさそう 行くの、やめた
兼子さんは、はじめからホームエデュケーションと考えていたわけではなく、娘さんが小2で不登校になってからの話である。イギリスのホームエデュケーションの紹介をした本を読んで知ったのが最初で、そのあとで東京シューレがやっているホームシューレを知って、子どもに聞いてやってみたいというので入会した。娘さんが小3のときだった。年1回の合宿を楽しみにしていて、月刊交流誌の「ばるーん」にも絵を描いて毎月投稿していたという。兼子さんの住む静岡県内掛川市でホームシューレのサロンが開かれるようになってからは月1回通うほか、地域の子ども会やイベントにも参加してきたそうだ。不登校になってちょっとちがう感じの娘になっていたのが、小学校高学年のころには本来の娘に戻っていい感じになったという。
学校にこだわらなくなり、「中学どうしようかな、中学生は楽しくなさそうだから行くのはやめた」と言い、中学3年間は毎日が楽しくて、朝笑顔で「今日何しようかな」と起きてきて、夜は「あー楽しかった」と寝る生活だったとか。
その後、定時制単位制高校に進み、自分の選んだ興味のある授業を受けていたので、おもしろかったという。ホームエデュケーションのなかの学校利用として、4年間の計画で卒業、ガーデニングの勉強をしたいと、イギリスの大学へ入学、来年卒業とのこと。兼子さんの話は、教育の一つの選択肢として確実にホームエデュケーションがあることを教えてくれる貴重な話である。(関東チーム統括)
不登校50年 #44 兼子和美さん
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