不登校新聞

488号 2018/8/15

息子の不登校を責められて 折れかけた心を救ってくれたもの

2018年08月30日 11:52 by shiko

 長瀬晶子さん(仮名)の次男は、小2の9月から不登校。「あまりに早すぎる」という周囲のとまどいをよそに、次男は日々、成長していく。母自身が揺れながらも、子どもの姿に勇気づけられる日々についてうかがった。

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――息子さんが不登校になったのはいつからでしょうか?

 私には高校3年生と小学3年生の息子がいて、長男は中2の5月から不登校になりました。その後、みずからの意志で北海道の高校に進学しました。悩みつつも、今は毎日登校しています。次男は小学2年の9月から不登校です。

 私は長男のときに、公立の学校のやり方に違和感を持ったので、次男は私立の小学校に入れました。1学年20人くらいで、先生の目が生徒全員に行き届く家庭的な学校でした。ここなら大丈夫だと思っていたのですが、1年生の終わりくらいから「休みたい」と言ったり、朝起きられなくなったりしました。

 小2の秋の連休に、北海道にいる長男のもとへ遊びに行ったところ、台風の影響で飛行機が止まってしまい、結局1週間ほど学校を休みました。本格的に行かなくなったのは、それからです。

 なぜ学校へ行きたくないのか、次男に理由を聞いてもよくわからないんです。先生は「いつも元気に遊んでいますよ」と言っていました。でも、家に帰ってくるとすごく疲れていて、制服のまま寝てしまい、朝まで起きない日もありました。

 次男がはっきりと意志表示をしたのは、親子で面談に呼ばれたとき。「僕はもう行きません」と先生に言いました。先生は「運動会の練習だけでもおいでよ」などと上手に誘うのですが、次男に迷いはないようでした。

 理由として思いあたることはあります。たとえばその学校では、ノートのマス目に同じ計算式をえんえんと書くような、くり返しの学習方法をとっていました。息子のノートを見ると字がぐしゃぐしゃで「とにかくやりたくない」という気持ちが伝わってきました。私も、嫌々やらせ続けることに意味が感じられませんでした。

 とは言え、次男が学校へ行かなくなったのは小学校2年生。かけ算の勉強が始まる直前で、次男は「ににんがし(2×2=4)」という言葉も知らないと思います。まわりからは「かけ算もできなくてどうするの?」「その年齢の子が不登校をしても自分の将来に責任が持てない」などと言われました。

 先生からは「休みグセがついちゃいましたね」と言われました。私もそんなふうにいろんな人から責められると、迷い、混乱しました。それでも、私は次男に「がんばって」とは言い続けられませんでした。なぜでしょうね。長男の不登校で、学校というシステムに対する不信感が蓄積していたのかもしれません。学校に行かないといけない理由が、私もわからなくなったんだと思います。

――不登校になってから、お子さんはどんな生活をされていますか?

 じつは長男が不登校になったのをきっかけに夫とは別居することになりました。不登校について夫婦でじっくり話し合う必要があったのに、話せなかったという不全感がありました。夫は一般論を語りますが、自分自身がどう感じているのかを聞いても、返答がない。「歩調が合わなくなった」状況に私が精神的にまいってしまい、家を出ました。

 次男は、そのときどきで自分が居たいほうの家にいます。最近まで趣味が合う夫のもとで生活をし、私の家には週末、泊まりに来たりしていました。

 次男が私立学校を辞めたあと、すぐに夫が公立の小学校へ転校させました。道具箱や名札なども全部そろえて、通える環境をつくったのですが、本人は1日、登校しただけで「ムリ!」と言って行かなくなりました。

 次に夫は、不登校の子が通う公的フリースクールに所属させました。そこは週3日以上通えば「レギュラーメンバー」になれるという決まりがあり、夫はそれを目標に次男を連れて行ってました。

 しかし、ある日、「もう行きたくない」と次男は私に行ってきました。次男は夫から「レギュラーメンバーになったら好きにしていい」と言われ、「行かなくていい自由」を手にいれるために、がんばっていたそうです。ずっと無理をしていたのが限界にきたのでしょう。

 いま次男は、私の家で生活しています。ある日、次男がめずらしく涙ぐみながらこう言いました。

 「父ちゃんは、家のなかにばかりいたら友だちができないって言うんだ。でも俺、友だちがいなくてもいいんだよ」。

 学校では、「友だちが多くて、元気で明るくて……」などの理想像があり、それを目指すよう指導されますよね。次男は「勝手に理想像を押しつけられるのはイヤだ」と泣いたのだと思いました。

 それからは、私の家ですごす時間が長くなっています。長男が不登校だったとき、「死にたい」と書かれたメモを見つけたことがあります。

 当時、住んでいた家はマンションの8階。ふとした瞬間に、思いつめた長男がベランダから飛び降りてしまうんじゃないかと、ゾッとしたことを思い出します。友だちがいなくてもいい、明るく元気でなくても、生きているだけでいい。生きているだけで百点満点。次男の涙は、このことを思い出させてくれました。

 もちろん、私の心も日々揺れます。ずっと家にいて、朝までゲームをしたり、動画投稿サイトの「YouTube」を見たりしている姿に「これでいいのかな」と思うこともあります。親しい人たちから「ゲーム中毒になる」「脳が壊れる」と忠告されたことも、1度や2度ではありません。テレビ番組では、不登校だった人が家で大暴れした、なんていうニュースも流れますよね。

 ネガティブな情報が入るたびに、自分が正しいのかどうか、すごく不安になります。そんなとき支えてくれたのが、不登校の親たちが集まる「親の会」です。月に1度ではありますが、長男が不登校になったときから通っていて、同じ経験をしている保護者と話すことで、とても励まされています。

 親の会では「子どもが不登校だからといって親がしゅんとしていると、子どもは自分を責めてしまう」と聞きました。たしかに長男が不登校になったばかりのとき、私自身、混乱したり、イライラしたり、暗い気持ちでいました。

 でも少しずつ私が元気になったら、長男も元気になっていったように思います。「あなたのせいで私はつらい」なんて気持ちでいるときは、子どもをひたすら追いつめているんですよね。

――次男が不登校したことを、お母さん自身はどう思われていますか?

 本人が「こんな自分はダメだ」と思わず、自分を嫌いにならなければ、なんとかなるんじゃないかな、と思っています。次男が夢中になっているゲームも「YouTube」も、私には楽しさがあまりわからない。けれど次男はそれが好きなんです。だけどそれを受けいれたい。

 夫は「また『バカTube』見てるのか」なんて言ってけなします。ネットを見る時間は夜9時までと決めて、自分が寝るタイミングでいっしょに寝かせていました。一方、私は、昼夜逆転でもいいから、好きなだけやらせています。

 親の会でもいろんな事例が紹介されます。ゲームを存分にできる環境で、親も昼夜逆転を気にしなくなって、好きなだけゲームを楽しんだら、エネルギーが回復すると聞いています。次男はまだ年齢的に小さいかもしれませんが、私は彼のなかから湧き出る力を信じたいし、彼のなかにエネルギーが蓄えられつつあると信じたいです。

 次男は今すごく楽しそうです。オンラインゲームを1日中しているからレベルがどんどん上がって、「俺は強いからオンライン上でも求められている」と言うんです。自分の実力が評価されるのがうれしいんでしょうね。そういう場を自分で見つけたのは、すごいことだと思います。これがもし、ゲームが逃げ場になっていたら、話はちがいます。

 長男がそうでした。のちに本人が言ったことですが、当時は自分の置かれている状況を忘れるためにゲームをしていたから、じつはあまり楽しめなかったとのことでした。

――次男さんの変化を感じることはありますか?

 ずっと家のなかにいても、子どもは成長しているんですよ。背は伸びたし、顔つきも変わった。それに、確実に学んでいます。学校の授業やテストの点数のようなバロメーターがないので、何を学んでいるのかうまく説明できないのですが……。

 そうそう、2日くらい前に「YouTube飽きた」と言ったんです。「来たな」と思いました。

 「飽きた」とか「ヒマだ」という言葉が出たら「よけいなアドバイスをしないほうがいい」と親の会で聞いていました。元気になってきているサインかもしれないけど「親の本心を探る言葉でもあるよ」とのことでした。

 なので今回も「ふ~ん、ヒマなんだ」と返事してたら、自分でごはんをつくり出したりしていました。やっぱり、みずから考えたり、決めたりする感覚も育ってきているんですよね。

 われながら想像もしなかった子育てをしていると思います。私はずっと優等生で、学校や社会に合わせて生きてきました。息子たちには身をもって「あなたはまわりに合わせる優等生のままでいいのか」「どう生きたいのか」と問われている気がしています。本当に鍛えられています。

 これからどうなるのかわかりませんが、彼らには自分自身を否定せず、嫌いにならず、生きていってほしいです。自分を否定することほど、生きるエネルギーを奪われることはないですから。

――ありがとうございました(聞き手・石井志昂/編集・吉田真緒)

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