学校に行かなくなった長男が家にいるようになって落ち着いたかと言えば、そうではありませんでした。
いつもイライラしていて、家族の対応に怒りをぶつけてきたかと思えば、テレビのニュースに傷ついたり、季節によっても落ち込むこともありました。
とりわけ、長男の機嫌が悪くなるのは、卒業式や入学式といった学校行事のある節目です。
妹、弟が一つ屋根の下に住んでいますから、そうした情報はどうしたって長男の耳に入ります。落ち着きたくとも、焦燥感ばかりが募っていたと思います。そんななか、長男が「お母さんのせいだ」と、よく口にしていたのをおぼえています。
中学受験をしたこと、苦手なスポーツがあること、父親が不登校を理解してくれないこと、とにかく何もかも、母親である私のせいだと言うのです。そんなことを言われても、どうしたらいいのか。途方に暮れることもしょっちゅうでした。
子どもが母親につらく当たるという話は、親の会でもよく話題に出ます。「一所懸命聞いているのに、子どもが怒りだした」とか「仕事などで中断すると、また同じ話のくり返しが始まる」という場合もあります。
共感してほしい…ただそれだけ…
文句を一晩中言われ続ければ、母親だって疲れはててしまいます。子どもの味方になっているつもりなのに、母親にばかりいろいろ訴えられて、つらい気持ちになってしまうことだってあります。
夫に打ち明けてみても、「育て方が悪い」とか「甘やかすからだ」と言われてしまう。子どもからも夫からも責められるという板挟みで苦しくなる。「ああ、母親ってつらいよなあ」と、ため息が出てしまいます。かつては、私自身もそんな母親のひとりだったんです。
「私もがんばっているのに、ちっとも認められない」という不満や日々のつらい気持ちを、夫や子どもたちでなく、私の母親にもわかってほしいとずっと思っていました。
立場や役割を変えてほしいとか、即座に解決してほしいとか、そういうわけではありません。「お母さんもたいへんなんだね」と、共感してほしかっただけなんです。私の大好きな家族にだけは、わかってもらいたかったのです。
ところが、私の母親には「つらい話は聞きたくない」と言われ、娘には「愚痴や文句、同じことのくり返しで疲れる」と言われてしまいました。自分の話を聞いてもらえないことに、不満と寂しさを感じました。
そのとき、ふと、思ったんです。長男も、こんな気持ちなのかもしれないって。
そのことに気づいてからは、息子の話を聞くことが、以前ほど苦痛ではなくなり、じっくり聞けるようになった気がします。すると、不思議なことに長男のイライラは収まっていき、私に対する文句も少なくなっていきました。(関川ゆう子)
【プロフィール】(せきかわ・ゆうこ)長男が中学3年生のときに不登校になる。以来、18年に渡って「登校拒否を考える会」(東京)に毎月参加している。全国不登校新聞社理事。
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