2006年7月4日、東京の弁護士会館にて「軍隊を捨てたコスタリカからバルガス教授来日」(主催・同集会実行委員会)と題した講演会が開かれた。今回は、そのカルロス・バルガスさんの講演録を掲載する。2002年に来日しているバルガスさんだが、改憲の動きが強まっている日本の現状を憂慮し、渡航費用などを自己負担して再来日。現在バルガスさんは、北海道から沖縄まで約14カ所で学習会や講演会に飛びまわっている。この日も集まった多くの聴衆と、人権の尊重、環境保護、民主主義と平和などについて、話し合った。
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みなさん、こんばんは。今日、お話できる機会があることに感謝いたします。日本に来ると、いつも自分の国のような気がしています。
いまこの国は大変な状況にあり、政治的にも歴史的にも、岐路に立っていると言えます。そのときに、私と時間を共有してくれることをありがたく思います。
みなさんのなかにも映画「軍隊を捨てた国」を見てくれた方もいるかと思います。今日は私の生まれたコスタリカのお話をしながら、みなさんの住んでいる日本がどんな状況なのかを理解していただけるような話をしたいと思います。
コスタリカは軍隊のない国です。そのぶん教育や福祉にたくさんの投資をしています。人権と環境を守ることに心を砕き、民主主義を尊重している国です。とても小さい国で、鉱物や石油のような資源はありません。そういう国が、どうして軍隊を持たずにやっていけるのか、みなさんは不思議に思われるかもしれません。
人権・共生・司法・教育で
コスタリカもほかの中南米諸国と同じように、スペインの植民地でしたが、1821年に独立しました。独立してから私たちは、民主主義を推進し環境を大事にするという基本的なことを主題にしながら、国づくりを進めてきました。
人権も大切にされ、19世紀には死刑を廃止しています。医療費などの社会保障は無料で、コスタリカ人だけでなく、コスタリカ在住の外国人も受けることができます。人権を大切にする意識はコスタリカ国内だけでなく、中米のすべての人々との共生も視野に入れているのです。
中米では司法が機能していない国も多いですが、コスタリカは司法も非常にしっかりとしています。こうした環境にあることから、コスタリカに中米で、はじめて米州人権裁判所がつくられました。
この米州人権裁判所とは、コスタリカの首都サン・ホセにあり、中米で起こる人権侵害、抗争を解決する役割を持った裁判所です。国を越えて多くの人がコスタリカにやって来ます。
また、コスタリカ国内は、とくに教育を重要と考え、たくさんのお金をかけています。はやくから義務教育を無償で保障し、教育レベルも中南米ではとても高いとされています。
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