不登校新聞

494号 2018/11/15

「親のこと、どう思ってる?」親に言えない不登校当事者の本音

2018年11月13日 12:16 by kito-shin
2018年11月13日 12:16 by kito-shin



 「あなたにとって、親は落ち着く存在ですか?」。そんなテーマが子ども若者編集会議で持ち上がった。参加者のなかから「親がいてくれるから安心できる」という松田佳純さんと、「親がいると気持ちが乱れる」という康平さんの2名に執筆いただいた。

 * * *

何気ない会話に安心します

 私は15歳で、学校には行っていません。両親は働いているので、ふだんは家ですごしています。私の楽しみは、今日一日の何気ない出来事を親や家族と話す時間です。

 「お母さん、聞いて。今日はこんなことがあってね」と話すおやつの時間。「おいしいね」と話す夕食の時間。「これ、かわいいね」と話すお出かけの時間。すべてが私にとって大切な時間です。

 私がこのような時間が好きな理由は、親といると安心で落ちつくからです。私は確実に親が好きだと言うことができます。そう断言できるようになったのは、私が不登校になってからです。

どん底のときに

 私は小学6年生の秋に不登校になりました。当時は毎日毎日、不安でおしつぶされそうでした。しかし親がいてくれることで安心し、「私は大丈夫だ」と思えました。

 なぜなら親は、私が不登校になる前と接し方がいっさい変わらなかったからです。ふだんの生活も、どこかに出かけるときも、「不登校だからどうこう」という考えはなく、笑い合い、泣き合い、ときには真面目に話し合い、私を信じ、認め、そっと見守ってくれました。

 だから私は、「何があっても、今までと変わらない、そのままの自分でいいんだ」と思えたんです。

 また、週2回ほど通っていた教育支援センターへの送り迎えをするため、仕事の時間を変更するなど、文句をいっさい言わず、私のためにいろいろと考え、行動してくれました。あたり前にできることではないと思います。本当に感謝しています。親は、やはり私の生活に大切な人で、安心できる存在なのです。

 このように親との信頼できる関係性を今後も保つにはどうすればいいのか?私なりに考えてみたのですが、大切なのは「親との会話」にあると気づきました。
 私はふだん、親とよく会話します。本当に何気ないことでも話すようにしています。ふだんひとりでいることが多いからこそ、親といっしょにいる時間を大切にしているのだ、と思います。

 家庭によって、親と子の関わり方や思いはまったくちがうとは思いますが、私は「親といて安心、落ちつく」と感じることができるこの親子関係を大切にします。だって、親のことが大好きですから。(松田佳純)

 * * *

心配しすぎてウザい

 僕は、親がいるおかげで気持ちが落ち着くということはまずないです。むしろ、気持ちが乱されることのほうが多いです。

 僕は不登校経験者で、20代となった今はひきこもりの状態です。生活は昼夜逆転していますが、それというのも親と顔を合わせるのがめんどうくさいからです。

 両親はひきこもっていることに対して否定的なことは言いません。むしろ僕のことをすごく心配してくれているな、と感じることが多いです。でも、その「心配」を、ときどき「ウザい」と思ってしまうのです。

 先日も、一人で外出するとき「ハンカチ持った?」「身だしなみがよくない」「電車の乗り換え大丈夫?」などと言われました。「自分はいつになったら大人の仲間入りができるのだろうか」と思ってしまいました。

ありがたいけど

 心配してくれることは、すごくありがたいことでもあると思います。だけど、なんだか監視されているようにも感じてしまうのです。僕としては親の目につかない、家族が寝たあとや、ひとりでお風呂に入っている時間が落ち着きます。

 できればひとり暮らしをしたいと思っています。ただ今の自分では働くこと、社会に出ることはそうとうなプレッシャーで、無理だと思うのです。だから実家暮らしを当分は続けるしかないと思います。

 でも、自分のペースで外出をしたり、バイトを始めることも考えています。親には、ひとりの人間として僕のことを信じてほしいです。そして、「あなたはあなたで、僕に関わらずにひとりの時間を持ってね」と言いたいです。(康平)

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