不登校新聞

497号 2019/1/1

「どうか事務員が出ますように」ほんとにしんどい毎朝の学校連絡

2018年12月25日 10:40 by shiko
2018年12月25日 10:40 by shiko




 小学校の集団登校の集合は7時40分。7時前には起きて準備を始めないと間にあわない。娘の部屋をノックしても当然、返事はない。ふとんのなかに丸まって身動きさえもしない。

 あぁ、今朝も仕事に行く前の大仕事があると思うと憂うつになる。

 それは、欠席の電話連絡。欠席の場合、8時すぎに連絡を入れるように言われていた。

 小学校の電話番号は暗記ずみ。50音順にならんだ電話番号リスト帳を見ずとも指が勝手に番号を押している。

 意地でも短縮ダイヤル登録などにするものか! 私は、うちの電話機にその番号を記憶させることさえ拒否していた。

 何回かの呼び出し音のあいだに、今日は誰が対応するのかと緊張する。

 事務の人ならくわしく質問を受けることはまずないが、A先生ならかんたんに朝のようすを聞いてくる。B先生ならつめたい声で“またですか”と言うかもしれない。コールのあいだ、息をするのが苦しかった。

 「はい、〇〇小学校△△です」。よかった! 事務の人だ。「6年3組の沢潟の母ですが、今日も休みます。理由は心です」それだけ言うと、「わかりました」の声を確認し、さっと受話器を置く。

 ふぅ。今朝も母親の任務終了。毎朝の電話連絡のなんと気の重いことか。

 欠席の理由にも悩んだ。腹痛、頭痛、発熱、風邪ぎみ。どれも当てはまるようだが、病気ということでもない。

 病気を理由にすれば病院に連れて行かなければならない。学校が合わないというのが本当の理由なのだろうがそう言って通用するのか。「病気でないなら連れてきてください」と言われるかもしれない。

 そこで苦肉の策が「心」。もし保健の先生が欠席理由をカウントしていたら、病欠に該当するかどうかは学校が判断すればよいことだ。

 人と話したくなかったときの電話連絡は大きな苦痛だった。傷口をえぐられるような気がしていた。

 一度、「もうたくさん!」と限界を感じ、次に登校するときに電話するということでは都合が悪いのかと担任に質問したが、「毎日の所在確認です」とつめたく言われ、しかたなくこの作業を続けた。

 長期欠席している家族の気持ちなど考えることもないのだろう。これは、無心になる修行なのだ。この電話連絡に感情を交えてはいけないと自分に言い聞かせた。

娘にとっての安心を守るため

 個人情報を保護する観点からクラスの電話連絡網がなくなり、クラスやPTA活動の連絡は携帯メールの一斉送信に変わっていた。

 行事や不審者情報など学校からの連絡をメール配信することができるのだから、その逆もできるはず。

 朝の欠席連絡をメールにしてくれたら、どんなに助かっただろう。毎朝、「心で休みます」とコピペしタップ1つで欠席を伝えられるのに。

 ただ、「電話したよ~」とふとんのなかの娘に告げたとたんに、娘は「ほ~い」とほっとした声を聞かせてくれた。生きている力が伝わってくる。

 私がうっかり電話連絡を忘れると、娘が一人で家にいるときに学校から所在確認の電話がかかってきたという。

 その電話には出たくなく、かといって出ないと保護者に電話がいくので娘なりに親に迷惑をかけられないと無理して電話を取り、ぼそぼそ話すことがあったらしい。

 だから、朝の電話連絡をしておかないと娘が穏やかにすごせなくなるのだ。娘の安心のために、心の安定のために、私は毎朝の苦痛な作業を欠かさず続けた。(沢潟裕子)

【プロフィール】
著者略歴/(おもだか・ゆうこ)2人の子どもの母。第2子が小学生から不登校。子どもたちの成長や母親へのニーズに応じて勤務時間や勤務先を調整する。現在、2人は社会人で第1子は独立準備中。第2子は一人暮らし中。

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