最近、注目が集まっているパニック症(障害)について、東京慈恵会医科大学附属第三病院精神神経科の中村敬医師に解説していただいた。
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パニック症(パニック障害)とは、パニック発作がくり返し出現する疾患です。個人の素因、性格、過労やストレスなどの環境要因が相まって発症するものです。
パニック発作とは、突然、動悸、頻脈、めまい、胸痛、吐き気、息苦しさなどの自律神経症状が生じ、「このまま死んでしまうのではないか」といった恐怖を伴います。
発作は数分以内にピークに達し、その後は時間の経過とともに徐々におさまっていくことが特徴であり、この発作でコントロールを失ったり死んでしまうことはありません。
けれども症状が強烈なため、「また発作が起きるのではないか」という「予期不安」によって、乗り物に乗ることや、ひとりで外出することが困難になる人も少なくありません。
パニック症には抗不安薬やSSRIというタイプの抗うつ薬が有効ですが、それだけでは十分ではありません。
まず、(Y.Y)さん(下記参照)のように「パニック発作で死ぬことはない」「発作は時間がたてば自然におさまる」という事実を理解し実感することが大切です。
そして不安のまま必要な行動に踏み込み、損なわれていた生活を立て直すことが回復の鍵になります。
この点において、認知行動療法や、自己を「あるがまま」に受けいれることを大切にする森田療法などの精神療法も治療の有力な手立てになります。くわしくは医師にご相談ください。
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◎中学1年生からパニック障害もち、そんな私が考えた3つの対処法
不登校経験者の(Y・Y)さんは中学1年生から現在に至るまで、パニック障害と向き合ってきた。つらい発作や、自分なりの対処法などについて、書いてもらった。
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私が初めてパニック発作に襲われたのは、中学1年生。3学期の期末テスト当日、朝の自習の時間でした。
突如、これまでに感じたことのない異様な感覚に襲われました。とにかくひとりになりたくて、教室を離れてトイレへと向かうと、頭から血の気が引くのを感じて、まるで自分だけがちがう世界へ行っているような浮遊感を覚えました。
「テストを受けなきゃ」という気持ちと「ヤバい」という気持ちで心が板挟みになり、しだいに過呼吸のような症状が出てきてしまったので、耐え切れず保健室に向かいました。
その後も頻繁に
その後もパニック発作は頻繁に起こるようになり、過呼吸が激しくなったり、泣いてしまうこともありました。中学1年生の3学期だけで3~4回ほど発作が起きていた気がします。
大人になってからもパ二ック発作は続いています。過呼吸と泣いてしまうというのがおもな症状です。
それでも今は少し安定してきて、発作が起きるのは数年に一度というペースに減ってきました。歳を重ねるに連れ、パニック発作になったときの対処法もなんとなくわかってきました。
心細くなったときは、私のパニックが一過性のものだと理解してくれている家族に電話をかけ心を落ち着かせます。
あとは、今までパニック発作になった、そしてパニック発作になったけれど大丈夫だったという経験値を使って、“私は大丈夫なんだ”と心を支える努力をします。
発作が起きても“転んだ程度”
いくつかある対処法のなかでも、私の一番の安心の源は、本で読んだ「パニック発作では死なない」という言葉です。
この言葉に出会うまで、私にとってパニック発作は、よくわからない恐ろしいものでした。知識もなく、正体がわからなかったからこそ、その恐怖はさらに倍増していたように思います。
でも「死なない」という言葉に出会って、私のなかでパニック発作はわかりやすいものになりました。「もし発作が起こったとしても私は死なないのだ」と安心できるようになったのです。
そして、発作が起こるということが“転ぶ・転んでケガをする”という感覚になり、とても楽になり、そのおかげか発作も起こりにくくなったような気がします。
だから、「パニック発作では死なない」という言葉を私のようにパニック障害を抱えている人に知ってもらいたいなと思います。
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