不登校新聞

501号 2019/3/1

「登校すると体にじんましん」小1から不登校の息子が求めていたのは学び

2019年02月22日 15:33 by shiko


フリースクール『IFラボ』主宰・赤沼美里さん

 今号は不登校の子を持つ親であり、昨年4月にフリースクール『IFラボ』を都内で開設した赤沼美里さんにお話をうかがいました。
 
 * * *

 長男のチー坊の不登校をきっかけに、2018年4月から東京都港区赤坂で発達に個性のある子たちのためのフリースクール『IFラボ』を開いています。

 チー坊の不登校が始まったのは小学校に入学してまもなくのことで、チー坊は幼稚園でも不適合を起こしたことがあります。そこは軍隊のような幼稚園だったので、1年もしないうちに保育園に転園。そのころ、発達に凸凹があることがわかりました。

 チー坊は小さいころから知的好奇心が旺盛で、大好きな魚に始まり、恐竜、宇宙、人体、元素、三国志など、知りたいことがあると自分でどんどん学びを広げていく子です。

集団生活がとことん苦手

 一方で、体幹が弱く疲れやすいのか、姿勢を維持しにくかったり、力の加減がうまくいかず、触ってはいけない物に触ってしまうことなどがあり、就学に備えて、1カ月に1回くらいの頻度で療育に通いました。

 それでも小学校に入学すると1カ月もしないうちに行きしぶりが始まりました。チー坊は気持ちの切り替えが苦手で、校舎に入りたくなくて暴れたり、座り込んだり、ひっくり返ったりしていたようです。

 「朝だけお母さんが付き添ってください」。先生からそう言わて、1カ月半くらいは私も一緒に登校し、給食が始まるまで、毎日付き添いを続けていました。

 しばらくすると今度は「お母さんがいると甘えてしまう」と言われ、付き添いをやめ、学校へ送り届けるだけに。

 ところが、チー坊は校門までは手をつないでニコニコで行けるのに、校門をくぐるとその瞬間にしゃがみ込んでしまいます。

 こんなに嫌がっているのだから、このまま家に連れて帰ったほうがいいのかもしれない。心のなかで、そう葛藤するのですが、登校時間がすぎて正門が閉まっても、こう着状態が続きます。

 すると職員口からかならず副校長先生が出てきて「大丈夫ですから」と言いながら、「行きたくない」と泣き叫ぶチー坊を抱きかかえ、教室に連れて行きます。私は必死に抵抗するチー坊の姿を胸を痛めながら見送っていました。

 チー坊の学校では5月に運動会がありました。先生方も「参加させてあげたい」と、一生懸命に力を尽くしてくださいましたが、運動会はチー坊にとって鬼門だったようです。運動会の日が近づくにつれ、夜になると、じんましんが出るようになりました。

学校へ行くと

 最初は「疲れたのかな」と思い、じんましんが出た翌日は学校を休ませていました。そんなことをくり返していたある日、じんましんが出るのは、決まって学校へ行った日だということに気づきました。これはSOSなのかもしれない……。チー坊の体にSOSが出たことから、夫婦で話し合いを始めました。

 運動会の当日、チー坊は友だちにちょっかいを出して、先生からみんなの前で叱責されていました。好きなプールがある日なら学校に行けるかもしれない。そう思って出席したものの、聴覚過敏があるチー坊は、真横で鳴ったホイッスルの音が嫌で耳をふさぎ、またも先生から叱られました。

 チー坊は、みんなと一緒の行動ができない。授業がかんたんすぎてつまらない。知っている字なのに10回も書かないといけない理由がわからなくて、ドリルに取り組まない。学校になじめない理由はたくさんありました。

 夫は学校へ行かない選択があってもいいというスタンスで「子どもの意見にも耳を傾けて、子どもの気持ちを大事にしたほうがいい」という意見です。

 保育園時代にお世話になった先生に相談すると「合わない場所にいるのは、本人にとっては、はてしなく長い時間だから、大人が思っている以上につらいはず。すぐには見つからないかもしれないけれど、チー坊に合う居場所がかならずあるはずよ」とアドバイスしてくれました。

 「行きしぶりになったら、力ずくで学校へ連れて行っても無理なものは絶対に無理! 親もすぐ気持ちを切り替えたほうがいい」。

 そう話してくれたのは、幼稚園時代のママ友が紹介してくれた不登校の子を持つ先輩ママです。

 小学校1年生のときから5年生まで親子の格闘を続け、5年間かけてやっと「無理なものは無理だ」と悟ったと言う彼女は、「学校へ行く行かないで親子が揉めるより、平日の空いている時間に映画館や博物館に行けるメリットを享受したほうがいいよ」。そう話してくれました。


赤沼千里さんと生後7カ月ごろの長男(現在は8歳)

説得力があった先輩ママの言葉

 子どもが四六時中、家にいると自分も疲れてしまうので、母親と子どもが離れられる時間をつくったほうがよいこと。子どもには学校とはまったくちがう場所に居場所をつくってあげたほうが、本人もラクになること。

 彼女の一言ひとことに重みと説得力がありました。「最近はフリースクールも定員がいっぱいのところが多いから、考えているなら早めに動いたほうがいいと思う」。

 彼女の言葉に背中を押された私は、体にサインが出るほどつらい子に無理をさせてまで学校に行かせるのではなく、この子に合った居場所を探そうと決断。学校には行かない選択をしました。

 フリースクールを見学するまでは、親子で博物館に出かけたり、家で本を読んだり、アクティブラーニングの学習塾で授業に参加したり。そういうとき、チー坊の目はいつもキラキラと輝いていました。チー坊は学校に行きたくないだけで、学びたくないわけではないのです。

 せっかくなら、チー坊にあった学びを提供してくれるフリースクールを探そう。最初に体験したのは、探求型の学びが特長のフリースクールです。でも、そこはチー坊に合っていなかったようで、見学の途中で「もう帰る」と言われ、先方からもやんわりとほかを探したほうがいいと言われてしまいます。

 チー坊が行けるフリースクールはないのかも……。そう思うと涙があふれ出しました。

 次に見学したフリースクールは、発達に個性のある子でもウエルカムで、「みんなちがっていい」というのがポリシーです。子どもたちもそれを当たり前のように受けいれて生活していて、先生は子どもの興味に沿った授業を展開してくれます。

 授業を体験した息子も「ここに行きたい」と即決。自宅からは電車を乗り継ぎ、片道1時間半の道のりですが、小学校1年生の6月の後半からはこのフリースクールに通うようになり、現在に至ります。

 クラスに35人といった大人数のなかでは浮いてしまうチー坊ですが、少人数のフリースクールは彼に合っているのでしょう。ここではトラブルが起こると徹底的に話し合って解決しているそうです。

成長を実感

 チー坊も自分の気持ちに折り合いをつけることを学んだようです。協調性や生きる力を着々と身につけ、親の目からも成長しているようすが見てとれます。学校へ行くたび出ていたじんましんも、現在はまったく出ていません。

 チー坊が笑顔でフリースクールに通うようになると、ずっしりと重しが乗っていた私の心もふわっと軽くなりました。

 私自身が心の元気を取り戻すと、人にはいろいろな学び方があり、学校だけが学びの場所ではないのだという思いを強く抱くようになりました。

 チー坊のように学校になじめない子はたくさんいるのに、日本にはそういう子が学べる場所がほとんどありません。発達に個性のある子の居場所はさらに少ない状況です。でも、子どもたちは知識欲に満ちていて、学びたがっています。

 チー坊が通っているフリースクールのような場所がもっとたくさんあったらいいのに。私がフリースクールを立ち上げたのは、そんな思いからでした。

 不登校は、その子が学校という場所になじまないだけで、かならずその子に合う居場所はほかにあるはずだと思っています。その居場所さえ見つかれば、子どもは理解あるまわりの人たちに助けてもらいながら、勝手に育ちます。そこでイヤなことがあっても、きっと自分の力で乗り越えていける。

 大人もそうですが、人は楽しい気持ちがないとなかなか前に進めません。子どもはとくにそうでしょう。毎日笑顔ですごしているチー坊を見ると、不登校を選択してよかった、心からそう思えるようになりました。

 不登校の子どもたちには、どうか学校以外の居場所をつくってあげてください。その場所が自分に合うかどうかは、子どもの判断に任せるのが一番です。一緒に見学をして、あとは子どもにまかせれば、そのうちきっとその子に合った居場所が見つかるはずです。(聞き手・小山まゆみ)

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