松原ゆきこさん(仮名)は就職活動を機にひきこもった経験を持つ。「明るい私」を演じ続けていたと話す松原さんが感じた就活特有のつらさとは何だったのか。
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私は大卒のひきこもりだ。不登校にはかろうじてならなかった。しかしそれは、「明るく楽しい私」という存在を学校でも家庭でもムリヤリ演じたことで、なんとかやりすごした結果だ。
私の両親は不仲で、しょっちゅう衝突していた。それが原因で私は周囲の人の顔色をつねにうかがい、「自分がガマンしても、みんながおさまるのなら」と、本来の感情や意志をおさえつけ、自分を演じていたのだ。当然、そんな自分が私は嫌いだった。
なんとか大学まで行った私がひきこもった理由は、シンプルに言えば就職活動でつまずいた、それにつきる。就活を始める前から、いくつかの資格を取得し、就活に臨む気持ちは人並み以上にあるつもりだった。
しかし、いざ就活を始めてみたら、とにかくつらくてたまらなかった。就活で必ず問われる「自己分析」、「志望理由」、そして自分の将来を考えることを通じて、「ずっと自分を演じていたこと」があらためてわかってしまったからだった。
誇れるものが何もなくて
自己分析は、自分が嫌いでしかたないのに自分と向き合わねばならないことがひたすらに苦痛だった。私には誇れるものが何もなく、ただただ、短所ばかりが思い浮かぶだけだった。
志望理由は自分が何をやりたいのかが、いくら考えてもわからなかった。
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