不登校新聞

509号 2019/7/1

ひといちばい敏感な子とその親が始めた安心基地の作り方

2020年04月17日 08:32 by shiko
2020年04月17日 08:32 by shiko

 

 私たちが住んでいる沖縄県の公立幼稚園の多くは、小学校に隣接するかたちで建っています。そして、私たちが住む地域の幼稚園は1年保育(小学校入学前の1年間のみ通う保育)でした。

 息子のたけるは水が顔にかかるのも苦手。人前で裸になって着替えるのも恥ずかしいからイヤ。ママとは絶対離れない。

 それ以外にも、ところどころで超がつく敏感さや繊細さ、慎重さを見せます。

慣れてほしい

 入園を翌年に控えた4歳のころ、少しでも集団行動に慣れてほしい、ママから離れることが平気になってほしい、そんな思いで子育て支援センターへ行き、保育園児との交流保育に参加しました。

 その日の内容はそれまで保育園でやってきたこととはちょっとちがいました。先生から発表された内容は身体を使うゲーム。

 「マズイ……」

 たけるは勝ち負けのあるゲームが大嫌いです。私は自分自身に「大丈夫」と言い聞かせて参加しました。

 古今東西〇〇の名前、手押し車競争……、たけるは盛り上がる子どもたちの空気に合わせてがんばっていました。

 けれども「次はリレーです」と先生が言ったとき、「帰りたい」と、つらそうな顔のたける。

 私が説得しようとすると、たけるの目には涙がこみ上げてきます。しかたなく見学することにしました。このとき、私は切ない気持ちになっていました。

 やっぱりほかの子と同じように、元気いっぱい遊ぶ姿を見たかったからだと思います。

 生まれ持った繊細さや感受性の強さや豊かさ、敏感さが人一倍。こういう気質の子のことを、HSC(Highly Sensitive Child)=人一倍敏感な子と言います。

 アメリカのエレイン・N・アーロン博士が提唱した概念で、ほぼ5人に1人は、HSCに該当するとも言われています。

 HSCの多くは集団に合わせることよりも、自分のペースで思索、行動することを好みます。

 これはその子の独自性が、はばまれることをいやがるほどの「強い個性」とも捉えられるのです。

 また、HSCはささいな刺激を察知し、過剰に刺激を受けやすいせいもあって、家や家族など慣れている人や場所では絶好調でも、新しい人や場所、人混みや騒がしい場所が苦手な子が多いのです。

 当時はまだ、私はHSCを知りませんでしたし、たけるがささいなことを気にしていやがるなど、ほかの子どもは問題なくできることを躊躇しやすいという気質を理解しきれてはいませんでした。

 そのためさまざまな場面でとまどい、焦ったり、悩んだりしてきました。
幼稚園に入園するまでになんとかしなければ……。

 それは私にとって、母親としての責任を背負った、重要なミッションでした。(文・絵 斎藤暁子)

■著者略歴
(さいとう・あきこ)『HSC子育てラボ』代表。心理カウンセラー。息子たける(9歳)と精神科医の夫は、ともに敏感・繊細気質。その気質がHSC、HSPであることを知り、情報発信の活動を開始。2018年にはWEBサイト『HSC子育てラボ』、2019年には、オンラインコミュニティ「HSC親子の安心基地」 を立ち上げる。共著書に『ママ、怒らないで。』(風鳴舎)、小冊子絵本『敏感な子の守りかた絵本』(アート印刷)。


■「わが家が目指したのはHSCの安心基地」の一覧こちらから

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