今回は、一般社団法人「ひきこもりUX会議」の代表理事・林恭子さんにお話をうかがった。今年5月、神奈川県川崎市で、児童ら20人が殺傷される事件が起きた。「容疑者はひきこもり傾向」との第一報を皮切りに、メディアでは「ひきこもり」に関する報道が連日続いた。自身、ひきこもり経験者として、この問題の先頭に立ち、メディア取材などを多数受けてきた林さんに、この3カ月間の動きをふり返っていただいた。
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――まずは5月28日に神奈川県川崎市で起きた事件からふり返ります。報道を受け、林さんはどんなことを感じましたか?
私が注目したのは、事件当日に川崎市が開いた記者会見です。容疑者とされる人物について、市の担当者は「ひきこもり傾向にあった」とコメントしました。
それは直後に放送されたNHKのニュースでも取り上げられ、「容疑者はひきこもり傾向」と報道されました。自宅でテレビを観ながら思いました。このままではまずいなって。
――まずいというのは?
2000年に佐賀で起きた「西鉄バスジャック事件」、同年に新潟で起きた「少女監禁事件」が頭をよぎったからです。
「西鉄バスジャック事件」の容疑者は不登校だったことも注目されましたが、どちらの事件も「容疑者はひきこもりだった」という報道が連日続いたことで、「ひきこもり」という言葉は一気に知れ渡ることになりました。
同時に、「容疑者」と「ひきこもり」がいっしょくたにされたことで、「怖い」「得体がしれない」といった負のイメージもセットになって広がってしまったんです。
そして今回、川崎市で園児ら19人を殺傷する事件が起きた。「容疑者はひきこもり傾向にあった」という報道が独り歩きすることにより、「2000年のときと同じことがまた起きてしまうのではないか」という危機感を持ちました。
「そうならないために」ということのひとつの答えが声明文だったんです。
読者コメント
akatsuki
一般公開 林さん方が限られた時間で各方面に配慮しながら作った声明文だ...