ベーシック・インカムというものがあって、それは政府がすべての個人に無条件に最低生活費を渡すことです。そう言うと、こう尋ねられます。「いいんですか、そんなことして。働かざる者食うべからずではないのですか」
さて「働かざる者食うべからず」なのでしょうか?
それは、それなりにわかるんです。不動産収入や金利収入で食っている人を見ると、うらやましい。うらやましいけれど、「働かざる者食うべからず」と言いたくもなります。職場のみんなが汗水たらしているときに、ぐうたらしている人を見ると「誰のおかげで?」と言いたくもなります。
でも、科学技術の成果はどこにいったのでしょうか。働ける人たちがすべて働かないと、われわれは必要な生産を行なうことができないのでしょうか。
人類はずっと、働かなくても暮らせることを夢見てきました。できれば自分だってつらく悲しい労働はしたくない。だから、働かない人をみるとたまらない思いが湧くのです。
でも、科学技術の進歩を見てください。ブルドーザーが1台あれば、奴隷1000人分くらいの仕事をしてくれます。昔だったら布をつくるのはたいへんな仕事だったのに、いまは工場の機械が自動的に大量の布をつくり出します。銀行のコンピュータは、ソロバン計算を不要にしてしまいました。
働かざる者は食うべからず・・・、ではない理由
そうやって、たくさんの労働が不要になりました。そこで、もし、不要になった労働の分だけ、人が職を失ったら、どうなるでしょうか。その人たちは、いったいどうやって食っていったらいいのでしょうか。生活のために、どんな非人間的な仕事であっても、無理にでも仕事をつくり出すしかないのです。
読者コメント