虐待とひきこもり
ひきこもりを引き出そうとすることによい結果が得られないことは、経験的にもしだいに知られていくようになった。当事者にとっては、つねに引き出そうとする力が周辺にあることで、安心できず恐怖感や不信感が募るため、それぞれの状態を受けいれながら暮らしていくほうがいい、ということが、親の会などでは語られるようになった。
しかし、その理解を揺るがすような事件が2004年1月26日に起きた。岸和田の中学生の虐待事件である。
この中学3年生の男子は、2002年6月ごろより殴られたり蹴られたりの暴行を受けたほか、食事もほとんど与えられないといった虐待を受け続けた。同年10月からは「不登校」と判断され、04年1月に発見された際は、餓死寸前の状態であった。身長155㎝に対し体重は24㎏。手と足は骨と皮だけの状態であばら骨も浮き上がり、皮膚の一部は腐蝕し、診察した医師は「これほど悲惨な姿は見たことがない」と語ったという。妻と内縁の夫は逮捕され、のちに実刑判決が下った。
こうした報道が全国を駆けめぐり、「なぜここまでひどい事態になるまで学校や児童相談所が発見できなかったのか」が、大きな問題になった。そんななか、この中学生の担任が「何度も家庭訪問をしたが、会わせてもらえなかった」「母親はときどき外出していると言っていた」などと供述した。
これにより、この虐待事件は、ひきこもりや不登校の家庭にも影響を与えることになった。
読者コメント