連載「わが家が目指したのはHSCの安心基地」vol.6
入園から毎日、親子通園を続け、息子のたけるは、お友だちとの遊びや歯磨き、そうじなど、一連の流れにも慣れて、通常の園生活は楽しくすごすようになりました。
でも初登園から3週目に入ったこのころ……、たけるは朝とても憂うつそうにダラダラして、
園に向かう車の中でちょっと泣いてしまうようになりました。
ときどき行なわれる「隣接の小学校校舎での活動」は、私がいっしょにいても不安そうでしたし、新しいこと・場所・人は、やっぱり理屈なしに苦手なのです。
今日は行きたくない
ある朝、たけるは布団から出ようとせず、「今日は行きたくない」と言いました。
そう言われて「休むこと」、「休むと連絡すること」にとても抵抗がある自分に気づきました。
入園して以来、たけるの言葉や行動一つひとつに否定的な反応になる自分に嫌気がさし「このままじゃよくない」と思って息子と話をしてみました。
聞くと、たけるは、「幼稚園は楽しいが、行きたくない。理由はわからない。行きたくないが21で、行きたいが17」と、たけるなりの尺度で行きたくない気持ちのほうが上まわっていることを示してくれました。
さらに話していくうちに、「怖いもあるけど、前はおうちにいたけど、毎日行くのが悲しい」と。
私がふと「あぁ、今までの生活が変わってしまって戻れないのが悲しいんだ」とつぶやくと、たけるの目に涙があふれてきました。
新しい世界への一歩は、その場所もタイミングも、けっして本人が望んで選んだものではないんだな、と実感しました。
休まずがんばったたけるの疲れを感じ、その日はお休みして充電すると、翌日は元気に登園しました。
まだコツをつかんでない
たけるとは折を見て、ママなしでの登園チャレンジの時期についても話題にすることがありました。
そのとき、たけるは「まだコツをつかんでない」と言いました。どうやら、コツをつかんでいないのは、本人だけではなく、「ママも先生も」とのこと。
くわしく聞いてわかったのは、ママのコツとは、たけるが「安全・安心」と感じられないことについて、表現力をまだ持ちえない本人に代わって、気持ちやニーズをひとつひとつ先生に伝える勇気や伝え方のこと。
先生のコツとは、たけるが何に不安を感じるかがわかり、早めに、こまめに説明をしてもらう。不安なこと、苦手なことは、無理にしなくてOKにしてもらうことなどでした。
これらはまさに、当時はまだ知らなかった、「HSC」が安全で安心と感じられる接し方のポイントだったのです。 (文・絵 斎藤暁子)
■著者略歴/(さいとう・あきこ)『HSC子育てラボ』代表。心理カウンセラー。息子たける(9歳)と精神科医の夫は、ともに敏感・繊細気質。著書に『HSCを守りたい』(風鳴舎)など。HSCとは/「Highly Sensitive Child」の頭文字を取った「HSC」は、心理学者エレイン・N・アーロン氏により提唱された概念。「ひといちばい敏感な子」などと訳されている。HSCは障害や病気の名前ではなく、生まれもっての気質。
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