不登校新聞

515号 2019/10/1

「学校へ行きたくない」と子どもに言われたら親がすべきこと

2019年10月08日 15:49 by kito-shin


フリースペースコスモ・佐藤真一郎さん

 「学校へ行きたくない」と子どもが思っていたら、親はどうしたらいいのでしょうか。25年間、不登校の子とともに歩んできた「フリースペース コスモ」(東京都三鷹市)のスタッフ・佐藤真一郎さんにお話をうかがいました。

* * *

 子どもたちが親に「学校へ行きたくない」と打ち明けるとき、その裏には「助けて!」「なんかしんどいんだよ」といった気持ちが隠れていることが多々あるようです。

 学校へ行きたくないとわが子に言われたら、多くの親がまず原因を究明し、親にできることなら最大限の手を尽くして解決してやりたいと考えるでしょう。その気持ちはとてもよくわかります。

 とはいえ、しんどさの渦中にいる子どもに「どうしたの?」「学校で何かあったの?」と問いかけても、自分の状況を客観的に見て、それを言語化し、論理的に話を構成して説明できる子はほとんどいないように思います。

 むしろ、それを考えるとさらにしんどくなる子のほうが多いかもしれません。

望んでない原因の究明

 僕が出会った不登校経験者に当時の気持ちを聞いても、多くの元子どもたちは「『何があったの?』『どうしたの?』『先生に何か言われたの?』と原因を聞いても意味がないよ」と口をそろえます。

 それは、なぜか。子どもは親に原因を究明してほしいと思っているわけではないからです。

 子どもは自分が一番安心できる存在である親に、自分の思いを聞いてほしい、受けとめてほしい、そういうふうに思っていることが多いように思います。

 子どもはそうすることで、自分は本当に親を頼っていいのか、親は助けてくれる存在なのかを確認しているのでしょう。親がしてあげられるのは、第一に子どもの気持ちを聞いて、その気持ちに寄り添うことです。

 まずは「そうか、学校に行きたくないのか」と子どもの気持ちを受けとめ、「うれしい、楽しい、苦しい、悲しい、気持ち悪い、いろいろな気持ちがあるけれど、今どういう気持ちだろう?」といったように、子どもの気持ちを聞いてほしいと思います。

 「そういう気持ちだったんだね」と親が自分の気持ちを受けとめようとしていることがわかれば、子どもは安堵し、踏ん張るエネルギーが湧いてくることもあるでしょう。

 それでもエネルギーが湧いてこないことのほうが多いかもしれませんが、その場合は何かすごくたいへんなことがあるにちがいないと考えてあげてください。

 子どもが不安そうにしているのであれば、それだけ学校へ行くのがしんどいということです。

 そのようなときは「うん、わかった。今日はどうする? 学校へ行くのをやめておく?」と言って、今この子は学校へ行くのがしんどいのだというところに思いを寄せてほしいと思います。

スタッフは原因を聞かない

 意外に思われるかもしれませんが、僕たちフリースペースコスモのスタッフも、子どもたちに不登校の原因を聞くことはありません。

 大人になった彼らと再会して当時をふり返り、初めて「そうだったのか」と知ることもあります。

 不登校の要因に関する文科省やNHK調査の結果を見てもその理由はさまざまです。

 しかし、いじめや先生に言われた言葉が引き金になった場合でも「今考えるとそれだけではなかった気がする」「もっといろいろなことがあったと思うけど、それが何かわからない」と話す不登校経験者はたくさんいます。

 不登校にはいろいろな要因が複合的に混ざり合っていることもけっして少なくなく、その子が何を感じ取っているのかを知るのは至難の業でしょう。

 不登校の原因を探し出し、それが先生の言葉が要因だったとわかったとしても、先生を変えれば学校へ行けるかというと、答えはノーの場合がほとんどです。

 つまり原因がわかっても、それが解決に結びつくとはかぎりません。だからこそ、不登校の原因を追及するより、今ここで苦しんでいる子どもの気持ちに寄り添ってあげることが大事だと思うのです。
 一方、大人でも何かに追い詰められているような状況のときに、頭が痛くなったり、気分が悪くなるなどの不調を感じることがあると思います。

 不登校の子も同じで、学校がある日にかぎって朝起きられない、気分が悪い、頭が痛いと訴えることがあります。学校へ行きたくないという気持ちが身体にあらわれているのか。それとも不登校の陰に病気が隠れているのか。その判断は難しいところです。

 お母さんとしても子どもに体調が悪いと言われたら「病院へ連れて行かなくては」と思われるでしょう。

 でも、こんなときの子どもは「病院へ行こう」と言われると、自分は親から理解されていない、親は自分を助けてくれないと考えがちです。

 子どもの心のなかには、自分のことを大事にしてもらいたいという思いがあるはずなので、まずはその気持ちを尊重してあげてください。

 そして「無理して学校へ行かなくていいよ」「そばにいるから大丈夫だよ」というメッセージを出すことを大事にしていただけるといいと思います。

連絡は家庭からタイミングを見て

 そうは心がけていても、実際に子どもが学校へ行かずに、布団のなかでじっとしていると「どうにかしてしまったのではないか」と不安になることもあると思います。

 しかし、病院でひととおりの検査を受けても、異常が認められないこともあり、病院へ行ったからといって体調がよくなるとはかぎらないのもまた事実です。

 長く学校に行っていない子も、夏休みになるとみんな元気になります。けれども学校が始まる時期が近づくと、また不調になってしまう。

 そして、新しい学期が始まったら始まったで、日曜日の夜がくるたび不安になる子も多くいます。

 学校を休んで家ですごしている子も、思いとしては「登校」をしています。そして、学校へ行けない自分はなんだろうと自分に問いかけ、思いとして登校しているうちは、苦しさが続いているのでしょう。

 ですから、「今はとりあえず学校へ行かなくていいよ」「親が学校へ行かなくてもいいと認めているから大丈夫」と伝え、子どもが学校へ行くことを考えなくてすむ時間、心もいっしょに休める時間をつくってあげてください。

 まずは2週間と期限を決めて学校を休ませ、その間は家で学校の話題を出さず、「どうしたの?」とも言わずに、子どものそばにいて、いつもどおりの日常生活を送ってみる。

 それでも継続して子どもが不調を訴えるようなときは、受診を考えてみるのもありでしょう。

 休んでいるあいだ、学校から連絡がくるたびに子どもがツラそうにしているときは、先生に子どものようすが落ち着くまで連絡を待ってもらうようお願いしてください。

 連絡事項などのやりとりは、こちらのタイミングのよいときにお母さんのほうから連絡するようにすれば問題ないはずです。

わが子は今後どうなる?

 この子は学校へ行くのがきつかったんだ。それに気づくことができても、わが子の将来を考えると不安や焦りを感じ、親の気持ちが揺らいでしまうこともあると思います。

 不登校の子の将来はどうなってしまうのか。結論を言えば、その先の道はけっして行き止まりではないことを知ってほしいと思います。

 フリースペースコスモにかかわり始めた当初、自分の好きなように時間をすごす子どもたちを見て、僕自身も彼らの将来がどうなってしまうのか、不安になったことがあります。

 でも、今では大丈夫ですと自信を持って言えます。設立から26年が経ち、フリースペースコスモを巣立ち大人になった彼らと話をする機会が増えてきました。

 彼らのなかには、不登校の経験を活かして臨床心理士の仕事をしている子もいれば、興味のあることを仕事にして、ゲーム業界やアニメ業界で活躍している子もいます。

 「自分はこんなことをしたいんだ!」といって、夢に向かって歩き続けている子もいます。夢を実現した子もいます。

 学校に通ったかどうかの過程はちがっても、一人ひとりが自分の進みたい道を見つけ、成長していく姿は学校に行っていようがいまいが変わらない。

 大人になった彼らは、社会を構成する大人の一員となって、わが人生を歩んでいます。そのなかのひとりが、あるとき僕にこう話してくれたことがありました。

 「不登校時代に自分がどうしたいのかを一生懸命に考え、こうしたいんだと言葉にできた体験は自分自身の財産になったと思う。それが今の自分に活きている気がするんだよね」。(聞き手・石井志昂、小山まゆみ)

【プロフィール】
(さとう・しんいちろう)。74年生まれ。保護者の声によって1993年に設立されたフリースペース コスモに在籍して25年。子どもの思いに寄り添いながら活動を続け、現在は不登校家庭への訪問支援なども行なっている。

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