不登校新聞

372号 (2013.10.15)

第19回「人とのつながりが社会」

2014年02月13日 15:54 by kito-shin
2014年02月13日 15:54 by kito-shin


◎連載「ひきこもるキモチ」

 いま思えば、今回紹介する支援者に一番助けられたかもしれない。

 前回、障害者向けの相談窓口で挫かれて失意のうちにハローワークを見渡すと、若者向け相談窓口なるものがあった。「ふつうの人向け」の相談窓口だろう。でも、無理な相談をして困らせてやろうと半ば挑戦的な姿勢で自分を奮い立たせた。ハローワークの実力を見てやろうじゃないか。いまの状況を一種のゲームみたいに思い込むことで、心が折れることを阻止する。失敗だらけの人生から学んだのは、心が折れると、継続できず失敗すること。それを意図的に避けるためだ。

 席に座ると、20代後半の女性がやってきた。民間の人材派遣会社から派遣されてきたキャリアカウンセラーで、歳は2つ年上。ストレートレールで生きてきた年下に人生の心配をされることほど惨めなことはそうはない。かろうじて同年齢以上なのが安心できる。しばらくひきこもりのような生活をしていて職歴がないこと、心身ともにさまざまな病気を抱えていて就労が困難なこと、それで障害者認定されているのだけど障害者窓口で断られるも同然な態度をされたことなどを話してみた。さてどうなるかと期待と不安のなかで返事を待っていると、
「あー、あそこの窓口は……」しょうもない、という感じで苦笑いしていた。どうもここは自分を受けいれてくれる雰囲気を持っている。

 まず始めにクローズドとオープンのどちらで就職活動をするか話し合った。これは障害者であることを隠すか隠さないかという意味だ。ここでも障害者雇用で(しかも将来性のある)仕事は難しいと言われた。ただ、このときはひきこもっていたときより病気がよくなっていたので、経過を見ながらオープンでもクローズドでもどちらでもやれる体制にしておこうという話になった。キャリアカウンセラーはよく話を聞いてくれ、よく考えてくれて的確であれば現実的なアドバイスもしてくれる。何年もこんな真摯な対応をされてこなかったから少し驚いた。支援者と当事者は、いつもどこか一方通行だったから。

目の前にいる他人とのつながり方が社会

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