※不登校児童数数の推移。最新データでは16万人と過去最多を更新した
2019年10月25日、文科省から不登校に対する取り組みをまとめた「不登校児童生徒への支援の在り方について」が、全小中学校に向けて通知された(以下、新通知)。
これにより過去4回にわたる文科省通知(以下、旧通知)はすべて廃止。「学校復帰に捉われない」という新しい不登校対応を文科省が求めていることを明確にした通知となった。
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廃止された旧通知は1992年、2003年、2005年、2016年に出された。いずれも、これまで文科省が不登校への対応を取りまとめてきた通知。
しかし新通知の内容は、直近の2016年に出されたものとほぼ同一内容で、支援方針、支援シートの活用、外部連携の重要性などが示されている。
新通知は、これらの内容のうち「出席認定」「教育支援センターの設置目的」などに関わる部分が変更された。文科省によれば「学校復帰のみが唯一の目標だと誤解を与える記述があった」というのが変更の理由。
文科省が「誤解を与える」と問題視した「出席認定」とは、学校に通わず、フリースクールに通った日やインターネットなどを利用したICT教育を受けた日を「出席扱い」にする措置のこと。
現行でも校長裁量で出席扱いが認められるが、学校復帰を「前提」にした場合にかぎり出席が認められていた。
また、学校復帰を前提とした不登校対応が行なわれるなかで、本人の意思に反して学校復帰を迫る教職員や復学の意志がない子を受けいれない公立の教育機関なども出ていた。
しかし、2017年に教育機会確保法が施行。復学の意志や学校復帰に捉われず、不登校支援をするよう方針が定められた。
法律の制定や有識者会議での指摘、市民からの度重なる要望なども受けて「新しい通知を出した」と文科省担当者は言う。
新通知より期待されているのは、学校復帰前提の対応が変わっていくこと。そして、教育支援センター、ICT教育、フリースクールなどを活用する不登校の子どもの増加である。
現在、学校が把握しているフリースクールに通う小中学生は4635人。ICT教育も広がっており、学校へ1日も通っていないが、登校日は全日、出席扱いをされたため、「欠席ゼロ」という生徒も出ている。
一方、新通知による懸念もある。そのひとつは、新通知においてもなお、不登校は「社会的自立へのリスクが存在する」とも指摘され、解釈によっては本人の意思に反する対応が依然として行なわれる可能性がある。
もうひとつは「出席認定」を求めて、本人が希望しないICT教育の受講やフリースクール通いを迫るケースの増加である。
懸念と期待の双方が寄せられている新通知だが、文科省は、学校に「個別の状況に応じた適切な対応」を求めていく方針である。(東京編集局・石井志昂)
通知の意味は 奥地圭子
新通知「不登校児童生徒への支援の在り方について」は、大きな意味を持つ通知である。「学校復帰が前提」の文言が消えたのである。
長いあいだ、不登校への指導目標は、学校復帰であり、フリースクールの出席扱いにしても、通学定期適用を認めるにしても「学校復帰」が前提とされた。
教育機会確保法の施行以後、法の基本方針と旧文書の文言の矛盾から、親と学校長、教育委員会とのあいだで混乱が起き、市民側から早く矛盾のないように統一してほしい、と何回も要望していた。
「学校復帰が前提」の文言が入る4つの通知は廃止され、今後はこの通知に基づいて、学校復帰前提ではなく、社会的自立へ向けて支援が行なわれる。
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