不登校新聞

525号 2020/3/1

将来の夢は「家で仕事する人」、息子の答えが素敵だと思った理由

2020年04月16日 13:36 by kito-shin

連載「わが家が目指したのはHSCの安心基地」vol.16

 ホームスクール1年目の勉強は、母親である私が家庭教師になりきり、「家庭教師ごっこ」を楽しく取り組みました。

 しかし、2年生になって「かけ算」が登場するあたりから、ごっこ遊びでも、勉強がイヤになってしまいました。

 息子の主体性を奪うことをしないという方針なので、家族で話し合い、教科書に沿った学習にこだわらず、息子の好奇心が湧く学びを大事にして、広げることにしました。

 それでも「やっぱり勉強はできたほうがいいよね」「大学を出ないと可能性が狭まってしまうのでは」と将来への不安が私のなかでよぎりました。

 YouTubeをよく見る息子は、小学校のあとに中学校、高校、大学へ上がることをわかっていて、進学に関する私の質問に対し、「う~ん、大学は行くかもしれない、高校はわかんない」と答えていました。

 そこで、大学へ行きたいと思ったときに、「『勉強しなさい! 学校行きなさい!って、なんでもっと強く親が言ってくれなかったの!』 なんて言わないかな」と言うと、息子はひどく怒った顔と声で、「何言ってんの? 自分で決めたんだ」と言いました。
 
 息子は、子どものことを信じない、自分の不安や価値観をちらつかせる私の心に敏感に気づき、不快感を示したのでした。

 またある日、いっしょにごみ捨てへ行きながら「たけるはどういう人になりたいんだろう?」と聞いたこともありました。

 そのときの答えは「結婚する。結婚して家で仕事する」でした。

 なんて素敵な答えだろうと思いました。息子の幸せのイメージは家庭のなかにあるのだと感じられたからです。

 つい、華やかな世界で活躍する人が輝いて見えたり、学歴や地位、名声がなければ何かを実現するのが難しく見えたりします。

 でも、それが幸せと直結しているのではないこと、かならずしも外の世界でなくていい、“家でいい” という、世間の“ふつう”や“あたり前”の枠に当てはまらない生き方の価値に気づかされました。

 まだ小学生で、世の中や仕事のことなど、大人と同じようにはわからないとは思います。

 でも、息子は「競争させられる」「自由や主体性を奪われコントロールされる」「安全でないと感じる人や環境と関わらせられる」といったことで、いのちが削られ、心身を蝕まられるような感覚になることを、自分でわかっています。

 HSC(Highly Sensitive Child =生まれつき繊細さや感性の鋭さ、慎重さを持つ、とても敏感で感受性が高い子ども)である息子は、高い共感性を持ち、物事を深く読み取り、よく観察して判断しているのです。

 慣れない相手や多数相手、苦手な環境だと、「自分はコミュ障(ネット用語のひとつ)」だと息子は言いますが、人と関わるのが本当は好きで、訪ねてこられる方にお子さんがいると、すぐに仲よくなって夢中で遊んでいました。また、今はゲームを通じてオンラインでつながった友だちと、活発に交流しています。

 社会性、適応力、それらはなぜか、学校へ行かなければ身につかないような思い込みもありました。

 しかし、そのようなものは、目的があって、自分が求めて選んだ環境のなかでは自然と主体的に発揮されるものなのだと、息子の成長を見ていてそう思います。(文・絵 斎藤暁子)

■著者略歴/(さいとう・あきこ)『HSC子育てラボ』代表。心理カウンセラー。息子たける(9歳)と精神科医の夫は、ともに敏感・繊細気質。著書に『HSCを守りたい』(風鳴舎)など。HSCとは/「Highly Sensitive Child」の頭文字を取った「HSC」は、心理学者エレイン・N・アーロン氏により提唱された概念。「ひといちばい敏感な子」などと訳されている。HSCは障害や病気の名前ではなく、生まれもっての気質。

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