不登校新聞

527号 2020/4/1

「入学式は行く」と決意したのに、まったく行けなかった私の不登校

2020年03月31日 14:57 by kito-shin

 今回執筆したのは、小学校で不登校を経験した富良野しおんさん。中学の入学式という大きな節目を目の前に、揺れ動いた当時の心境を書いていただいた。

* * *

 今から15年前の4月、中学校の入学式は、私にとって忘れられない日です。

 小学6年生のとき、すでに私は学校へ行けなくなっていました。5年生のときの転校によって、環境の変化や友人関係に疲れてしまったからです。

 小学校を卒業すること自体も当時の私にとっては大きな壁で、結局、卒業式には出席できないまま、苦しかった小学校生活は終わりました。

重く張りつめて

 そんな私を次に待ち構えていたのは、中学の入学式でした。私の心は今までにないくらい重く張りつめていました。

 それは、中学校という節目を目の前に「ここを逃したら、もう学校に戻れるチャンスはない」と誰よりも私自身が感じていたからです。

 これ以上、家族に迷惑をかけられない、そしてまわりの子たちと同じように、ふつうの人に戻りたいという焦りもあったと思います。

 中学へ行ける可能性を少しでも高めるために、私は入学式までのあいだ、自分のなかで何度も中学校へ行くイメージを膨らませました。

 自分が教室へ入っていくのを想像したり、しばらく会っていない同級生に話しかける言葉を考えたりしました。

 「本当に自分は学校へ行けるのか?」という不安もありましたが、それはなるべく考えないようにして、1日1日をすごしていきました。

 そうして、迎えた中学の入学式当日。入学式に間に合う時間にきちんと目が覚め、顔も洗って、朝ごはんも少し食べました。あとは自分が動き出すだけ。

 でも、私の心と身体はどうしても動いてくれませんでした。腰かけたベッドの上から一歩も動けないまま、ただ時間だけがすぎていきました。

 状況を察して私のようすを見にきた母に、「行けない」と自分の口から伝える、それがあの日の私には精一杯でした。

 私を責めることなく母が去ったあと、途方に暮れながら私はふと、部屋の窓から見える学校へと続く道に目を向けました。

 すると、そこには中学校の制服を着て、家族といっしょに楽しそうに歩いていく同級生の姿がありました。

 その光景を見た瞬間、どこかで張りつめていた糸が切れて、涙があふれてとまらなくなりました。

自分が情けない

 あんなに心の準備をしたのに行けなかった自分への情けなさ、両親に娘の入学式を経験させてあげられなかった罪悪感、これから私はどうなるのかという不安。

 あまりにたくさんの感情がよぎって、今思い返しても、どれくらいの時間泣き続けたのかわからないくらい、私は泣きました。

 ひととおり泣いたあと、私のなかに残ったのは「中学校にも行けなかった自分」だけでした。同時に私は「私はもう中学校へは行けない」と悟りました。

 「最後のチャンスだと思って、自分なりに必死に準備した。本気で行こうと思っていた。それでも、それなのに、私は今日、中学校へ行けなかった。もうこれは行けないことを受けいれるしかない」と感じたのです。

 そして、私はその日のうちに、「中学校には3年間行けない、行かない。だから、あきらめてほしい」と両親に伝えました。

 両親はしばらくの沈黙のあと「わかった」と一言だけ返してくれました。

 あの日から、私は本当に1日も中学校へ行きませんでした。制服もつくらなかったし、卒業アルバムも持っていません。学校の外観すら知りません。

 今思うと、中学校の入学式は私にとって勉強も人生もどうなるかわからなかったけど、「学校へ行かないで生きていく自分」への覚悟を決めた日だったのかもしれません。

 学校へ本気で行こうとして、本当に行けなかった日。そんな日は後にも先にも、この日しかありませんでした。

 今、私は27歳になりますが、あの日を、行けずに泣いた自分も含めておぼえていたいなと思っています。(富良野しおん)

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