記者会見のようす
一般社団法人「ひきこもりUX会議」は3月26日、都内で記者会見を開き、「ひきこもり・生きづらさについての実態調査2019」の調査結果を発表した。有効回答1686名のうち、「現在もひきこもっている」と回答したのは940名だった。
ひきこもりに関する調査は平成28年と平成30年に内閣府が行なっているが、回答者はそれぞれ49人、47人だった。今回の調査では、そのおよそ20倍となる大規模調査となった。
ひきこもる人は怠けているのか
ひきこもりはこれまで、「本人の怠けである」「働くことで問題は解決する」というように、個人または就労問題として語られてきた。
しかし、今回の調査結果を見ると、ひきこもりに対する世間一般の認識とその実態にズレがあることがわかる。
「現在もひきこもっている」と回答した940名のうち、「病院・診療所による医療サービスを利用したことがある」と答えた割合は71・5%だった。
また、56・3%が「ハローワークや若者サポートステーションなどによる就労支援サービスを利用したことがある」と答えており、半数以上のひきこもり当事者が現状を変えるために動いていることがうかがえる。
一方で、そのうちの9割が現状の支援に「課題を感じる」と答えている。
具体的には「就労についてひどいプレッシャーを受けて精神症状が再発した」「サポステの担当がひきこもりに理解がなく傷つけられた」「ハローワークで自身の経歴について叱責・説教を受けた」などの声が寄せられている。
これに対し、「ひきこもりUX会議」の林恭子代表理事は「ひきこもり当事者は怠けているわけではない。みずから支援につながろうとしているにも関わらず、支援先で適切な対応がなされていない」と、憤りを隠さない。
川初真吾理事は「行政が支援のあり方やデザインを考えるプロセスにひきこもり当事者を入れ、いっしょに考えてほしい」と訴える。
ひきこもりの「ゴール」は
また、自分がひきこもりだと思う理由について、4割が「通学・就労していないから」と答えている。また、9割以上が「現在も生きづらさを感じる」と答えている。
一方、「生きづらさが何によって解消したのか」という問い(複数回答)に対し、もっとも多かった回答が「安心できる居場所が見つかったとき」で42・2%だった。
以下、「こころの不調や病気が改善したとき」(41・4%)、「自己肯定感を獲得したとき」(37・9%)と続いた。「就職したとき」は13・2%と、もっとも低かった。
ひきこもり当事者が語る生きづらさは、就職によって改善されるとはかぎらないことがわかる。
松山大学の石川良子准教授は「今回の調査の一番の成果は、これまで語れなかった人たちの声を多く集めたことにある」と指摘したうえで、次のように語る。
「集まった940人の声をどう活かすのか。たんに支援のあり方を変えるだけにとどまってしまっては、『働いて稼げてこそ一人前の大人である』『ひきこもる人は弱い人たちで、支援される対象なんだ』という今の社会の価値観を維持することになってしまう」。
ひきこもり開始、22歳が最多
ひきこもりは、えてして不登校の延長また並列するものと扱われることも多い。
ところが、今回の調査結果をみると、「現在もひきこもりである」と回答した当事者が最後に在籍した学校は「大学」が39・4%ともっとも多く、「短大」(6・9%)「大学院」(2・5%)と合わせると、半数近くが高等教育機関へ進学後にひきこもりになっていることがわかる。また、ひきこもり開始年齢は「22歳」がもっとも多かった。
また、ひきこもり期間の平均を年代ごとに見ていくと、年代が上がるごとに長期化する傾向が見られた。10代の平均は2・5年だが、60代になると22・3年だった。(東京編集局・小熊広宣)
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