学校再開から、1カ月あまり。私が今気になっているのは、不登校の子どもの気持ちです。学校再開前と現在では、子どもの気持ちも少なからず変化していると感じています。
「今は人数が少ないから大丈夫だよ」「週1日から試しに来てみないか」「勉強はパソコンでもできるよ」など、これを機に再登校や学習を促そうとする先生もいるでしょう。そうしてくれることで、親も少しホッとするかもしれません。
しかし、ここで考えてほしいことがあります。大人を安心させる選択肢が子どもの安心につながるとはかぎらないということです。
提示された選択肢がどれも今の子どもの気持ちに沿わない場合もあれば「こんなにいろいろしてくれているのに、どれも選べない私はダメなんだ」と、かえって子どもを追い詰めてしまうことだってありえます。
3つのポイント
思い出してみれば、3月の全国一斉休校も、急に巻き起こった「9月入学論」も、これからやってくる夏休み短縮についても、大人は子どもの声をどれだけ聞いてきたでしょうか。
学校内のドタバタした慌ただしさはもうしばらく続くと思います。そうした環境に、以前よりもしんどさを感じてしまう子もいると思います。
そんな今だからこそ、親の方には、まず子どもの声を聞いてほしいと思います。その際、私からお願いしたいことが3つあります。
1つ目は「子どもの話を最後まで聞く」こと。
頭でわかっていても、ついやってしまうのが「でもね」と子どもの話をさえぎってしまうこと。
「私の話を途中までしか聞いてくれない」と認識されてしまっては、子どもは本音を打ち明けてくれなくなってしまいます。
2つ目に「価値判断をしない」こと。
大人から見たとき、子どもの話は矛盾していたり、時にはウソが紛れているかもしれません。
だからといって「それはまちがっている」「それじゃ社会で通用しない」などと頭ごなしに否定してしまうと、これまた子どもは何も話せなくなってしまいます。
最後に「徹底的に子どもの味方になる」ということ。
「味方になる」というのは「言いなりになる」と同義ではありません。つねに「子どもの命の側に立つ」ということです。
これがなぜ難しいかというと、先生の声、親族の声、ご近所さんの声、ネット上の声など、親はいろいろな声が聞こえてしまい、親自身の気持ちが揺れてしまうからです。
先ほど述べたように、親の不安が解消する選択肢で子どもも楽になるとはかぎりません。「学校へ行きたくない」という子どもの本音を聞くと、親としてはガックリきてしまうかもしれません。
でも、落ち込みすぎないでください。この一言を発するまでに、子どもは何度も何度も葛藤しています。
その子どもの本音が聞けるということは、親のなかにある「ラジオ」のチューニングが子どもの声の周波数にピタッと合っている証拠でもあるわけですから。
これまでの取材を通じ、親の方々からよく聞かれた願いは「わが子の笑顔が増えること」でした。
先行き不透明な世間に合わせるのではなく、また大人が安心する方向に子どもを変えようとするのでもなく「どうしたら子どもが笑顔になるか」ということから考える。
そのために、子どもの声を聞く。これが子どもの気持ちを楽にし、ひいては親の気持ちも楽にしていくことの第一歩だと、私は思います。(東京編集局・小熊広宣)
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