不登校新聞

556号 2021/6/15

発達障害のグレーゾーンかもしれない僕。見つけた生きるヒント

2021年06月15日 17:37 by kito-shin

 今回の執筆者、鬼頭信さんは「自分は発達障害のグレーゾーンなのかもしれない」と思ったことがあるという。小学校から今までのご自身の経験を書いていただいた。

* * *

 発達障害には「グレーゾーン」という層があるらしい。発達障害はグラデーション状の障害で、「ここからが障害」と線引きがむずかしく、その境界線上の人をグレーゾーンと言うみたいだ。ところで僕はこれまで「3つの学校」へ行っている。その経験をふり返ったとき、自分もグレーゾーンかもしれないこと、そして、そんな自分との付き合い方も見えたような気がした。

 1つ目の学校は小学校や中学校などいわゆる義務教育の学校。初めに自分に違和感を覚えたのは小学校の帰りの会だった。先生が明日の予定と持ち物を黒板に書くのだが、僕は時間内にノートに書き写すことができなかった。たいして長い文章でもないのに、先生が黒板を消すのに間に合わず、書ききれないのだ。

 思えば、僕は授業中もノートを取るのがまわりの子よりも遅かった。たくさん文字を書く先生の授業は何度も黒板を確認しないと漢字が書けないのでたいへんだった。授業中は写すことに必死で整理ができず、僕のノートはいつもぐちゃぐちゃ。あとで見返しても復習ができないノートしか書けないので、しだいに勉強についていけなくなり、小学3年生のころのテストの点数は10点以下にまで落ちてしまった。

 2つ目に行った学校は、約10年間の不登校とひきこもりを経験したあと、23歳で通った自動車学校。座学では小学校と同じように、ホワイトボードを使いながら授業が進められた。自動車学校の先生たちは、板書が追いつかないと待ってくれる優しい人ばかりだった。しかし、その環境でも僕はノートを写しきれず、先生に急かされるようになった。苦肉の策で漢字を書くことをあきらめたら、なんとか写せるようにはなった。しかし、小中学校のときよりも圧倒的に文字の量が少なく、書いてある内容もかんたんなのに「こんなこともできないのか」と僕は自分が恥ずかしくなった。

 3つ目の学校は、聴覚障害者へ通訳をする「パソコン要約筆記」という資格を取るために通った。ここでは資格取得のため1年間みっちり授業を受けたのだが、さいわいパソコン作業が主だった。手書きだったら挫折していたかもしれないが、ノートもパソコンで取ればいいので、板書にもつまずかなかった。

講師に呼ばれ

 しかし、授業も順調に進み、資格取得試験を目前に控えたある日のこと。僕は講師に呼ばれ、「もしかして、あなた発達障害じゃない?」と聞かれた。理由は、僕が提出した課題が自分の名前と住所以外ぜんぶ、ひらがなだったからだ。「資格の試験は筆記試験だから、漢字も書けないと合格できない。でも診断書があれば免除になるかも」と、講師はアドバイスをくれた。

 僕は、さっそく近所の心療内科を受診した。結果的に僕は発達障害とは診断されなかった。しかし試験に支障があるということ、発達障害のなかの学習障害の傾向があるということで診断書をもらうことができた。そして、診断書のおかげで、ひらがなで答えを記入しても試験を無事に合格することができた。診断書がなければ100%落ちていたと思う。

 講師に「発達障害じゃない?」と言われたときは驚いた。「まさか自分が?」と思ったし、何より漢字が書けないのは勉強ができない自分のせいだと思っていたからだ。読むことはできても、書こうとすると細部が思い出せない。スマホで調べて何度も確認しながらじゃないと漢字が書けない。これらはみんな、僕の努力不足だと思っていた。

 結局、僕が発達障害なのかどうか、今もよくわからない。ただノートの書き取りが苦手でも、パソコン入力なら問題なくできたし、診断書をもらって資格の筆記試験も合格できた。自分の不得意を得意でカバーする手段は意外とあるのかもしれない。「なんとかなるものだし、これからもなんとかなるのだろうな」と僕は、今思っている。(不登校経験者・鬼頭信さん・33歳)

関連記事

勉強を無理強いせず、本人の自信につながるサポートを目指して

564号 2021/10/15

他人の目がずっと怖かった。不登校を経験した私が今思うこと

564号 2021/10/15

小学4年で不登校に。僕が行きたくないと言った理由

563号 2021/10/1

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

564号 2021/10/15

不登校になったら勉強はどうするのか。学校との付き合い方はどうするのか。周囲...

563号 2021/10/1

理由も言わずに「学校へ行きたくない」と伝えた小学校4年生当時。中学校1年生...

562号 2021/9/15

3人のホームエデュケーションで育ててきた原田雅代さんにお話を伺ってきました...