◎子どもの「過度な競争」、自殺、いじめ、不登校の背景に
6月12日、「国連・子どもの権利委員会」は日本の定期報告書を審査し、「総括所見」を採択した。定期報告に基づく審査および勧告は、今回が3回目。(3・6・7面に関連記事)
「児童の権利に関する条約」(以下、条約)は、子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約。日本は1994年に批准した。
締約国は第44条に基づき、「国連・子どもの権利委員会」(以下、委員会)に対し、自国での取り組みに関する報告書を提出することが義務づけられている。委員会は、子どもの権利保障という観点から法律、福祉、教育などの各分野がきちんと整備され機能しているかを審査する。不十分とされた場合には勧告というかたちで改善を促されるわけだが、「総括所見」そのものに法的拘束力はない。
3回目となる今回の「総括所見」では冒頭、第2回勧告(04年)に基づく日本政府の取り組みに一定の評価をしつつも、多くがあまり実施されていない、もしくはまったく実施されていないことについて、「遺憾に思う」との見解を示した。
「総括所見」で示された中身を見ていくと、子ども手当てや高校授業料無償化など、時事的な取り組みも審査されており一定の評価を得た。しかし、こうした取り組みが子どもの生活にどう影響するのか、追跡調査による評価が困難であるという懸念を示した。
ADHD治療、 薬物中心を懸念
委員会からの勧告は今回で3回目となるが、なかには第1回勧告(98年)、第2回勧告と是正を受けていながらも、みたび改善を求められている項目がいくつかある。具体的には、コリアンやアイヌなどの民族的マイノリティ、障害、婚外子などを背景に持つ子どもに関わる法整備などがなされておらず、いまだに根強い社会的差別があることが指摘されている。同様の問題として「自殺の増加」「体罰」などが挙げられた。
「メンタルヘルス」については、注意欠陥・多動性障害(ADHD)治療に関する調査研究および医療専門家の研修が実施されていることを評価する一方、ADHDがおもに薬物によって治療されるべきと見なされていること、ならびに社会的要因が正当に評価されていないなどの懸念があると指摘。この点についてはさらに踏み込み、ADHDと診断される子どもたちの推移をふまえたうえで、同分野における調査研究が製薬産業とは独立して実施されるよう勧告している。
不登校(truancy)に関しては、「教育」の項目で触れられている。少子化が進むなかでの過度な競争が、いじめ、精神障害、不登校、中途退学、自殺などを助長している可能性があると指摘した。こうした学校が過度な競争状態にあることについての懸念および是正勧告については、第1回、第2回に続いて今回の「総括所見」でも盛り込まれた。
今回の勧告を踏まえ今後、日本が子どもの権利保障に向けてどう取り組むか。成果と取り組みの概要を盛り込んだ次回の報告書は、2016年5月をめどに提出することになる。
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