子どもが不登校をすると、下の子(弟や妹)が行きしぶりを始めるのは「不登校あるある」のひとつです。しかし、上の子どもの不登校を受けいれている親でも、下の子まで学校へ行きたがらないとなると、どうしてよいかわからなくなることがあります。Aさんもそうでした。
中学2年生の息子さんが不登校をしているさなか、小学6年生の弟が「ぼくも学校へ行きたくない。お兄ちゃんだけずるい」と言い出しました。父親は「お前はお兄ちゃんとはちがう。学校には行け!」と叱りました。Aさんは、それをとめることができなかったと言います。「私は、不登校を受けいれているつもりでした。でも、下の子どもまで学校へ行かなくなったら、正直困ります」と、Aさんは苦しい胸の内を言葉にしました。
25年前に子どもが不登校だったBさんが「その気持ちよくわかる。うちは、子どもが3人いるけど、3人とも不登校だったから。私の育て方が悪かったのかなあと自分を責めた。学校の先生や親戚からも親の育て方が悪いみたいに言われて、そうとう傷ついたなあ」と、ふり返ってくれました。
すかさずAさんがたずねます。「それで、Bさんは下の子どもが学校へ行かないことを許したんですか。私が相談した方は『親が腹を決めるしかない』と言います。でも…」と、自分を責めているようでした。
Bさんは「長男が不登校をしたときにいろいろ失敗をして、子どもも私も苦しかったから、長女と次男のときは無理に学校へ行かせようとしなかったと思う」と答えました。
2人のやりとりをじっと聞いていたCさんが「やりながら考えていくしかないと思います」と口を開きました。「うちの場合は子どもが2人いますが、どちらも今は学校へ行っていません。ただ、小2の妹の場合は、行きたくない気持ちをわかってもらいたいだけのような気がしています。先のことを考えたら不安になりますが、そのときに考えるしかないと思っています。『学校へ行かなくてよい』と無理に腹を決めなくてもよいと思います」と、親が背伸びをする必要はないことを語ってくれました。
腹を決める中身が大事
私は「大事なことは、腹を決めるということの中身ではないでしょうか。学校へ行かなくてよいということではなくて、子どもを無理矢理にどうこうしないで、意思を尊重すると『腹を決める』ことが大切だと思います。場合によっては追いつめたり、傷つけたりしてしまうこともあるかもしれませんが、そのことに気づける親に成長できることが大切だと思いますよ」と、自分の考えを述べました。
3人の子どもが不登校をしたBさんも、今2人の子どもが不登校をしているCさんも、たくさんの失敗をくり返しながら、子どもの意思を尊重する大切さに気づいたはずです。Aさんも、自分の答えを見つけていただけると思います。(加嶋文哉)
【プロフィール】
加嶋文哉(かしま・ふみや)
1959年生まれ。小学校教諭を32年間勤め、在職中だった1994年に「星の会」(不登校を考える親の会)を設立。
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