不登校新聞

565号 2021/11/1

「こども庁」創設の是非を問う【各党の回答/衆院選2021】

2021年10月25日 14:32 by shiko
2021年10月25日 14:32 by shiko

質問:「こども庁」の創設にかかる現状の問題認識と今後の可能性は?

【自民】
 児童生徒の自殺者数は過去最悪となり、児童虐待やいじめ問題はますます悪化するなど、子ども・若者を取り巻く状況は深刻さを増しています。人口減少にも歯止めがかかっていません。このようななか「こども」をまんなかに据えた政策を効果的に推進するため、各府省が個別に実施している政策、予算、法令を網羅的・一元的に整理・把握し、タテ割りを打破し、省庁横断で推進するとともに、年齢による切れ目や、地域間格差などの解消や是正についての取組みが必要です。

【公明】
 公明党は、子どもの幸せを最優先にする社会の実現に向けて、年齢による切れ目や省庁間の縦割りを排し、子どもと家庭を総合的に支えていくための司令塔機能を担う新しい行政組織「子ども家庭庁(仮称)」の創設を政府に提言しています。子ども家庭庁(仮称)は、妊娠期から出産、就学前の幼児教育・保育を一体的に取り扱うとともに、いじめ、不登校、自殺など子どもに関するさまざまな課題に対し、各ライフステージに応じて切れ目ない対応を図っていくべきと考えます。

【立憲】
 担当府省が分かれているため、予算が分散したり、必要な支援が届かなかったり、子どもの権利を擁護ができていないなど、縦割り行政による弊害が生まれています。一元的に子ども政策を推進する組織として、立憲民主党は「こども省」創設を検討していますが、たんに新たな行政組織という「箱」をつくるだけでなく、ほかの先進国と比べてもすくない子どもに関する予算を倍増させ、子どもから若者まで切れ目のない支援を総合的に推進します。さらに、「子どもの権利利益を擁護する独立機関」の設置や、子どもが意見表明できるような仕組みを検討します。

【国民】
 すべての子どもが人生の平等なスタートラインに立つための施策が重要です。家庭の経済力や保護者の就労環境などによって教育に生じる格差の解消、子どもたちの脳と心を育むインクルーシブな教育をはじめとした学びの多様性の確保、そしてこのような教育体制と親の負担軽減を実現する予算が確保できる体制の構築が求められます。そして一番大切なことは、子どもの目線で、子どもたちにとって最良の環境をつくることであり、子どもたちの声を聴くことだと考えます。

【共産】
 こども庁が関心を集める背景には、日本は子ども関係予算が極端に低く(教育予算はOECD諸国で最下位、家庭関係予算は39か国中30位)、しかも子どもの権利が学校そのほかできちんと保障されていないという「2つの現実」があります。自民党の「こども庁」の議論は、これまでの姿勢に根本的な反省を示さず、組織改編を前面に押し出したものとなっているため、現時点では賛成できません。私たちは、子ども関係予算をOECD水準に引き上げ、子どもの権利条約の完全実施を行なう意思を明確にし、そのうえで執行の体制について検討することが筋道ではないかと考えます。

【維新】
 こども庁については、組織ありきの議論には与さず、まず子どものために使われる大規模な財源を確保することを目指すべきと考えている。具体的には、予算枠を財務省の取りまとめから独立させ、GDP の一定割合をかならず子どものために配分するなどと定めたうえで、その財源を着実に活用できる組織のあり方を検討するべきである。

【社民】
 政府の「こども庁」は理念が後回しにさており、子ども・子育て予算が増えるのかどうかさえ不明です。日本は1994年に「子どもの権利条約」を批准しましたが、国内法の整備は非常に遅れています。同権利条約の精神が児童福祉法に書き込まれたのは2016年でした。総合的な子ども・子育て施策を展開するために、「子どもの権利基本法」(仮称)の制定とこども庁の創設を車の両輪として推進すべきと考えます。

【N党】
 子どもに関する施策や予算を一元的に把握することは非常に重要です。現状は各省庁の縦割り行政による弊害で国民にとって子どもにかかる諸政策も非常にわかりづらく、子どもに届きづらいものとなっています。子どもの未来を考える重要性を国として考えていくためにも、こども庁創設は国民にとって非常に意味のあることであると考えます。なお、こども庁を創設するだけでは足りず、現在必要とされる抜本的な施策を思い切って実行することが肝要であることは言うまでもありません。

【れいわ】
 「こども庁」については、具体的な内容がわかっていないので、評価を避けたいと思います。ただし、過去の省庁再編が「政治主導の政策決定」を旗印に縦割り行政を排して組織をスリム化する目的を掲げたが、最終的には再び、厚生労働省の機能別分割論まで出てきていることを考えると、積極財政によって、子ども施策を充実させるという前提を置かなければ、いくら省庁再編を行なっても効果は充分には出ないのではないかと思います。ただ、仮に「こども庁」的な新省庁を設置するのであれば、障害児に関する施策も、インクルーシブ教育の観点で、現在の厚生労働省ではなく、「こども庁」が所管するべきだと申し添えます。

※各項目200文字程度での回答を依頼し、回答全文を掲載しました。漢字仮名づかいのみ編集部にて校正を行なっています。

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