不登校新聞

294号(2010.7.15)

論説「持ちつ持たれつを求めて」山下英三郎

2013年12月17日 16:39 by kito-shin
2013年12月17日 16:39 by kito-shin


 モンゴルに通い始めてもう10年以上が経つ。この間、何度足を運んだことだろう。90年代の終わりごろにマンホールチルドレンのニュースを目にし、援助の手立てが非常にかぎられていることを知り、自分に何かできることはないだろうかという単純な動機から関わりは始まった。どのような方法で、誰と組んでいつごろまでやるのか何の見通しもなかったが、人との出会いにも恵まれ今日にいたっている。

 関わりの仕方としては、さまざまな団体の助成金を得て比較的大がかりなプロジェクトを展開することもできただろう。しかし、私は自分が個人的にできる範囲内で相手の顔が見えるかたちで活動することにこだわってきた。それは、多額を投じる援助よりも、おたがいの顔が見え名前を覚える関係のなかで支援をするという直接性を大切にしたいと考えたからである。

 2000年代の前半までは街の風景もどこか寂れた印象があり、ストリートには物乞いをする子どもたちもいた。現在も深い関わりを持っているウランバートル市立の児童養護施設などは、初めて建物の中に足を踏み入れたときは真昼間であるにもかかわらず、ほとんど暗闇状態で廃墟だといってもいいほどであった。かつて兵舎だったというその建物の中に100人を超える子どもたちが保護されていたが、居住環境としてあまりにも劣悪であったために私の気持ちは塞がれるばかりであった。この児童養護施設にかぎらず、公的な施設はどこも似たり寄ったりの状態だった。

人との出会いが生きる手がかり

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