2003年8月、ひきこもり当事者による雑誌『IRIS』の第2号が刊行された。
表紙が、夏空に、すばらしい大輪のひまわりが何輪も咲いている美しいデザインである。創刊号は、あわい背景に桜の花びらをアレンジした、やはり美しいものだった。これらの表紙は、やはり、ひきこもりの青年の手によるデザインで、独学で身につけた技術とセンスであり、『IRIS』は以後も美しい表紙が続いた。
第2号でも、彼らがインタビューをしたいと望んだうちの一人、スクールソーシャルワーカーの山下英三郎さんの記事、当事者による座談会「ひきこもりと人間関係」のほか、当事者手記、当事者文芸、親の手記など満載で、132ページもある充実した内容となった。
なかでも、50代の男性の当事者手記は、目をひいた。ひきこもりは若い人のものというイメージがあるが、何歳でもあり得る。
かりに、Nさんと記すが、Nさんは両親亡き後の実家で、姉と弟と一匹の犬とともに暮らしている独身。昼間、姉と弟は仕事に出かけ、Nさんは、ものづくりや犬の散歩をしながらすごしている。この年で仕事をしないでブラブラしているNさんを、姉も弟も冷たく邪険に扱うようで、家にいても身の置き所がない気持ちで日々を送っているそうだ。
Nさんの父親は、なにかにつけてNさんを殴る人だった。自分が気にいらないとすぐ怒ったり、怒鳴り出すような人だったそうで、亡くなられたときも、悲しいという感情も沸かず、殴り返してやりたいぐらいだったようだ。
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