不登校新聞

579号 2022/6/1

学校への登校しぶりが始まったら知ってほしい。子どもが新たな一歩を踏み出すサインとは。

2022年06月03日 16:47 by shiko
2022年06月03日 16:47 by shiko



 5月連休が明けてから1カ月ほどが経ちました。ふだんの生活に慣れてきた方も多いと思いますが、連休明けから学校への行きしぶりや不登校が始まった子どもも多いでしょう。

 不登校は8年連続で増加し、小中学校で20万人。毎年のように過去最多を更新しており、どんな家庭でも、どんな子どもでも不登校になることは文科省も指摘しています(※1)。

 不登校にならずとも、給食や放課後だけに登校する子、一週間のうち数日はかならず休む子も相当数います。そして、こういう子もけっして楽な気持ちではありません。みんなと同じようにできない自分を自分自身が責めてしまうからです。

 こういう子どもたちの親や周囲の大人が知りたいのは「自分の対応は、これでよいのか」に尽きます。不登校について20年、取材をしてきましたが、対応の善し悪しは一概にいうことはできません。しかし、よい対応をしているとあるサインが出てきます。このサインを指針にして対応をしていけば、さまざまなことが起きる生活のなかでも道筋が見えてきます。

そのサインとは、子どもがこんなふうに言うことです。

「ヒマだなあ」

「退屈だなあ」

「やることがないなあ」

これです。退屈な気持ちをつぶやくようになるのです。

とても後ろ向きな発言ですが、これこそ「新たな一歩」を踏み出す時のサインです。この言葉が頻繁に聞けたら親はどうぞ乾杯してください。もう少しで子どもは羽ばたいていきます。

なぜなのか。解説します。

どんな子どもでも不登校になる際には、心に傷を負います。大人から見て「怠けだ」「甘えだ」と思える子でもそうです。大人にはバレないよう子どもは傷ついてきたのです。

その傷は、周囲の支えや心の整理が進むことで薄まっていきます。支えとして必要なのが「安全基地」です。自宅が安全基地になる子が多いです。学校や勉強から離れて家で心を休める。たくさん寝て英気を養う。その過程のなかで、自分を責めていた子も、周囲からの遅れに焦っていた子も、どんどん元気になっていきます。

元気になった子どもは「より豊かな人生を送りたい」と願います。しかし家のなかにいては限界がある。「自分にはもっと、よりよい人生があるはずなのに」、そんな思いからつぶやくのが「やることがないなあ」「ヒマだなあ」という言葉です。

「ヒマだなあ」を連発するようになれば周囲の手助けはほとんどいりません。子ども自身がネットなどで調べてきて、新たな道を自分で見つけてくるからです。親にできることは、子どもからの提案に「いいね。やってごらん」と快諾すること。ただし危険なことは承知しなくてもちろん結構です。

 一方、親や周囲の方には注意点があります。以上のような心理状態を知らなければ、子どもから「ヒマだな」「退屈だな」と言われて嬉しい人はいません。学校にも行かず、勉強もせず、家の手伝いもしないで、ゴロゴロと寝っ転がりながら「ヒマだなあ」とつぶやかれたら、、、、「洗濯ぐらい手伝ったらどうだ!」と怒りたくなるのが人間です。「ヒマだ」という言葉は、ムカつく言葉なのです。

 なので親は「ヒマだ」という言葉が聞こえてきたら、逃げてください。家を出る必要まではありませんが、ドラマを見始めたり、子どもと距離をとったりなど、子どもの声を聞かない対応をお願いします。親子であれ腹が立つことを言われたら嫌なんです。嫌なことは原則ガマンしなくて大丈夫です。アドバイスを求められないかぎりは「ヒマだ」というつぶやきからは逃げてください。

 最後に宣伝も一つさせてください。子どもが「ヒマだ」と言うためには、どうすればいいのか。これについても指針があります。しかし、それは2022年6月9日の講演会『不登校の子どもが新しい一歩を踏み出す時』(午前11時~12時30分・オンライン講演)にて解説させていただきます。

 講演は、今月からスタートした不登校の親専用コミュニティ「親コミュ」の会員限定で行なわれるもの。親コミュは、LINEのビジネス版「LINEWORKS」を通して不登校の親どうしでで交流をし、月1度のイベントに参加できます。ただし有料です。月額1000円です(初月無料)。有料ですが初月無料なおで、講演時に登録して終了後に退会でも結構です。関心がありましたら、講演と親コミュをぜひ覗きに来てください。

 詳細とお申し込みは不登校新聞『親コミュ』を検索してHPからお願いします。(『不登校新聞』代表 石井志昂)

■イベント『不登校の子どもが新しい一歩を踏み出す時』

日程 2022年6月9日
時間 午前11時~12時30分
講師 石井志昂(『不登校新聞』代表)
講演 ZOOMにて
参加費 「親コミュ」会員限定(1000円初月無料)


■石井志昂(いしい・しこう)プロフィール

1982年生まれ。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。同年、フリースクールに通い始める。17歳から不登校新聞社の子ども若者編集部として活動。不登校新聞のスタッフとして創刊号からかかわり、2006年に編集長に就任。2020年からは代表理事も務める。不登校や引きこもりの当事者、親、識者などへの取材を行い、メディアにも出演。著書に『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ社)など。

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