不登校新聞

583号 2022/8/1

政治家・寺田静さんに聞く「不登校しても政治家になれる?」

2022年07月27日 17:24 by kito-shin
2022年07月27日 17:24 by kito-shin

 「政治家」というと遠い存在に感じる方が多いかもしれません。「ましてや不登校の自分が政治家という職業につくなんてありえない」と思いがちでは? じつは参議院議員の寺田静さんは不登校経験者の1人なんです。今回は寺田さんにご自身の不登校経験や政治家になるために家でできることについて、執筆していただきました(※写真は寺田静さん)。

* * *

 寺田静と申します。私が不登校になったのは中学3年生のときです。「学校へ行きたくない」と両親に話したら、「じゃあ家で勉強したらいい」とあっさり言われ、そのまま卒業まで1日も登校しませんでした。もちろん両親に打ち明けるまでは苦しい時間と葛藤がありましたし、その後も「ほかの子は行けているのに……。やっぱり行けない私がダメなのでは」と弱気になることもありましたが、理解ある両親のおかげで「学校は嫌いだけど勉強は別に嫌いじゃない」と切り分けて考えることができました。

 その後、高校中退も経験しましたが、最終的には大検(現在の高認)を取得し、大学へ進学。卒業まで楽しくすごすことができました。

 現在は参議院議員として、社会を変えるために働いています。不登校経験者の私にとって、すべての子どもたちに学びと育ちの場の選択肢があるように日本の教育を変えていくことが、私のライフワークです。

私だからできる不登校支援を

 今国会で成立した児童福祉法の改正では、居場所支援を盛り込んでもらうことができました。また、フリースクールや不登校家庭への独自支援をしている自治体と制度について、全国の実態調査を求め、昨年末に実施されました。政治なんて誰がやっても同じだと言われますが、こうした経験を通じて「そんなことはない」と実感できるようになりました。

 そのほかにも、子どもたちを取り巻くさまざまな課題、子育てまわりのこと、男女平等のことなどについて取り組んでいます。子どもにまつわる課題を突き詰めて考えると、日本ではあまりにも子どもの権利が軽視されていると感じます。そうした「社会のおかしさ」をしっかり変えられるように、日々がんばっています。

 ちなみに私が「社会のおかしさ」に初めて気づいたのは、学校での経験からでした。当時マンモス校であった転校先の中学校では、(今となってはありえないですが)ムチを持つ先生がいたり、忘れ物をすると体罰があったりと、理不尽なことがたくさんある学校でした。

 また、あるときは授業中にシンナー臭くなって帰って来る生徒がいたこともありました。しかし、先生はその生徒をいっさい見て見ぬふり。その一方で、ほかの生徒に対しては「前髪がちょっと長い」「スカートの丈が短い」など、口うるさく注意するのです。私としては、「シンナーを吸っている子のほうが先生の助けを必要としているのに、どうして無視するのだろう」と当時は言語化できないながらも、大人の不誠実さに傷ついたのだと思います。そうした学校で経験した理不尽や違和感が、土台となっているのかもしれません。私の政治活動の根っこの1つだな、と感じています。

自分の気持ち 発信してみよう

 さて、政治家になるための家で始められる1歩として、私の経験からおすすめしたいのは、「自分の体験や気持ちや考えたことを発信してみること」です。
 私は高校中退後、学校で経験した理不尽を新聞の読者投稿欄に投書して取り上げてもらったことがあります。掲載までのやりとりを通して私が感じた思いを社会に認知してもらえたことで、私の個人的なことは、じつは社会とつながっていると感じることができました。

 今は時代が変わり、新聞の投書ではなくとも、そして匿名でも、さまざまなかたちで発信することができるようになりました。私もよくツイッターなどで思ったことをつぶやいたり、不登校のことや子どもの虐待のことなどを情報収集したりしています。

 どんなことでもかまいません。発信をすることで、考えが整理できますし、同じような思いを持っている方とつながることもできます。そうして誰かの目に留まり、社会を変えていくことにつながるかもしれません。ぜひ、あなたの声を発信してみてください。(了)

不登校していても政治家になれる?

 まず、一言でお伝えすると、なれます。むしろ、なってほしい ! (笑)

 政治家と一口にいっても、ポジションによって役割もさまざまです。たとえば市区町村長や知事の場合はすべての分野のマネジメントをしなくてはなりませんが、国会・地方議員は、自分の感性に沿って自分の関心があることに重点的に取り組むことで、同じような思いを持つ方たちの代弁者として役に立つことができます。私の場合は不登校という経験もあって、子どものことには人一倍の思い入れと問題意識と課題を拾える感性があり、「自分以外の人にはできないことだ」という自負もわずかながらあります。 

 まだまだ政治の世界は、今の教育システムのなかを順調に歩いてきて成功した人ばかりが多く、だからこそ不登校への理解も乏しいし、今の教育のあり方を変えようと思う人がすくなすぎるとつねづね思っています。それが日本の教育を変えられない最大の原因だと。だから、仲間がほしい。切実に求めています ! !(寺田静)

【プロフィール】寺田静(てらだ・しずか)
1975年生まれ。横手城南高校中退後、大検取得、育英会の奨学金を受け、早稲田大学入学。2019年参議院議員選挙初当選。すべての子どもの育ちと学び、ジェンダーギャップの是正、里親委託の推進、環境問題、地方が抱える課題などに取り組む。

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