昨年度のいじめの認知件数は約61万5000件。現在のいじめの特徴や、予防のためにできることはあるのか。「NPO法人ストップいじめ!ナビ」副代表理事・須永祐慈さんは「4つのキーワードからいじめ防止を考える」と言います。2022年7月10日に行われた須永さんの講演(主催・岐阜県立希望が丘こども医療福祉センター発達精神医学研究所)を抄録します。(編集・遠藤光太、茂手木涼岳)※写真は須永祐慈さん
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須永です。今日は、いじめについて、捉えなおしをしましょう、というお話をします。はじめに、いじめの認知件数についてです。文科省は毎年、いじめの認知件数の統計を発表しています。このデータによると、2020年度のいじめの認知件数は全国で51万7163件(2021年度は61万5351件)。しかしこの統計は先生がいじめを認識し、さらにその上司が「これはいじめだ」「いじめじゃない」と判断する。さらに教育委員会に挙がり、文科省にまで挙がってくる数字が集計されています。
教員が出した統計であり、また上司へと報告する過程で、数が減っていく場合もある。だから、認知件数だけではいじめの実態が見えづらいのですね。データの取り方にそもそもの課題があったのです。また、社会的に大きなインパクトのあるいじめ事件が起きるとアンケートの内容を変えて調査し直し、その結果、認知件数が上がる、ということもくり返されてきました。2011年に起きた大津市のいじめ自殺事件はメディアに大きく取り上げられましたが、それがきっかけとなり「いじめ防止対策推進法」が成立し、いじめの定義が変わったことによって、いじめ認知件数は右肩上がりになっていくのです。
では、子どもたちの実態により近いデータはあるのか。
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一般公開 いじめる子どもが何故いじめるかの背景について、「学校」とい...