不登校新聞

288号(2010.4.15)

論説「いじめ理解に新たな地平」内田良子

2013年12月20日 17:23 by kito-shin
2013年12月20日 17:23 by kito-shin


 2006年秋、子どもたちがいじめを訴えて命を絶つ事件が相次いで報道されました。このきっかけになったのが、05年9月に北海道滝川市で小学校6年生の松木友音さんが、教室のスクリーンのバーにひもをかけ自殺をはかった衝撃的な出来事でした。一命は取りとめたものの、意識が戻ることなく、06年1月に他界しました。教卓には7つの遺書が残され、「私が死んだら読んでください」とあり、いじめから自死を選んだ道筋が書きしるされていました。

 今年3月26日、この裁判の和解が成立しました。その判断は今までのいじめ裁判では前例のない遺書の内容を真正面から受けとめた画期的な内容でした。過去にあったいじめ自殺の真相を問う多くの裁判で、ぜひとも遺族や当事者が聞きたかった判断でした。命をかけて訴えた子どもたちの最後の叫び声がやっと大人たちに届いたのです。

 裁判所が証拠に基づいて認定した事実を読むと、わずか12歳の少女が子どもの社会である学校で3年生から6年生に至るまで、一学年一クラスの環境で仲間はずれにあい続けていました。さらに、小学校生活最後の思い出となる修学旅行では、担任が加わって何回も話しあっても、どの班にも入れてもらえないという現実を突きつけられていたのです。遺書に書かれた内容を裏づける証拠を丹念に組み立て、自殺の原因はいじめだったと認定したのです。この証拠となる事実を地道に執念を持って集めたのは、わが子のように成長を楽しみにし、ともに生活してきた大叔父の木幡幸雄さんでした。友音さんがいじめによって命を絶った事実を遺書で知り、学校や教育委員会に真実を知りたいと働きかけたにもかかわらず、じつに冷淡で不誠実な対応にあい、遺族の悲しみを踏みにじられたのです。
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