不登校児童生徒数が過去最多となったことを受け、永岡桂子文部科学大臣が1月31日、2022年度内に新しい総合的な不登校対策をまとめることを記者会見で発表した。2月に開催された専門家会議での検討をふまえ、文部科学省は3月31日、「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策『COCOLOプラン』」を公表した。本プランはどのような内容なのか。また、新たな動きとして、どのような取り組みが盛り込まれているのか。本紙記者が解説する(※画像はイメージです)。
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文部科学省は3月31日、「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策『COCOLOプラン』」をまとめ、全国の教育委員会に通知した。本プランの取り組みを通じて「不登校により学びにアクセスできない子どもたちをゼロにすること」を目指すという。
不登校対策 3つの目指す姿
本プランでは目指す姿として、①不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整える、②心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援する、③学校の風土の「見える化」を通して、学校を「みんなが安心して学べる」場所にする、の3点を掲げている。
①については、▼不登校特例校、校内教育支援センターの設置促進▼教育支援センターの支援機能強化といった従来の施策のほか、▼柔軟な学級替えや転校等の対応▼高等学校等の生徒を含めた支援▼多様な学びの場・居場所の確保などをおもな取り組みとして挙げ、学校・教育委員会と民間のNPOやフリースクールなどとの連携強化が重要であるとしている。
②については、1人1台端末を活用し、子どもの心や体調の変化の早期発見を推進する。子どもの健康観察をICTで把握する取り組みは、大阪府吹田市の教育委員会が「デイケン」というアプリを導入しており、実施校では新たな不登校の出現が抑えられたとの調査結果が出ているという。文部科学省によると、同様の取り組みは今年2月現在、411の市町村で行なわれている。
③については、今年2月に開かれた「不登校に関する調査研究協力者会議」にて報告された、学校風土を計測するツールの導入が盛り込まれている。授業への満足度や教職員への信頼感などを数値化し、それを根拠に学校運営の改善をはかることで、児童生徒が安心して学べる学校づくりを進めるとしている。
そのほか、「不登校児童生徒の保護者への支援(保護者の相談機関の設置、情報提供など)」や「地方公共団体の福祉部局と教育委員会の連携強化」などを速やかに推進していくべき取り組みとして挙げている。
本部を設置 進捗を管理
本プランの公表に際し、明らかになった動きが2つある。1つは、「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策推進本部」の設置。文部科学省内に設置し、本部長を文部科学大臣が務め、本プランの進捗状況を管理するとともに、取り組みにおける不断の改善をはかるという。
もう1つは、不登校、いじめ、暴力行為などを把握するために毎年実施されている「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の見直しだ。不登校の要因や不登校傾向の児童生徒の規模などを分析把握するため、調査内容を令和5年度より見直すことが明示された。また、不登校児童生徒への継続的な実態調査の実施も盛り込まれた。
文部科学省はこども家庭庁と初会合を開催するなど、同庁との連携を踏まえ、取り組みを進める考えだ。(編集局・小熊広宣)
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