――不登校のきっかけから教えてください。
私は、中学受験をして入った私立中学に、電車で通っていました。ところが、1年生の6月ぐらいから、過呼吸の発作を起こして電車に乗れなくなってしまって。学校に戻るために電車に乗る特訓もしましたが、じつは、電車に乗れなくなった原因はその中学受験だったんです。
私、本当は地元の公立中学校に行きたかったんです。でも、それを言えないまま受験して、受かって、通うことになって。長いあいだ、本心を隠し続けていたことがストレスになって体調を崩した1年生の夏休み、初めてきちんと自分の本心を親に話すことができました。
――現在は高校に通っているわけですが、フリースクールとのちがいで思うことはありますか?
中学1年生の秋から18歳までフリースクールに通って、いまは高校に通っていますが、自分が高校生になってみて、高校とフリースクールとのちがいを考えることが増えました。
たとえば、定期券の問題。フリースクールに通う高校生年齢の子どもには、通学定期券が適用されないからすごく高いんです。
私の場合、半年でだいたい10万円ぐらい。「学割が適用されれば4万円弱で買えるのに」と思いつつ、初めて通勤定期券を買うとき、私の前に並んでいた大学生が1万円ちょっとで通学定期券を買っているのを見てしまって。ものすごい悔しいというか親に申し訳ないというか、なんとも言えない気持ちになりました。そのときのことは、いまでも鮮明に憶えています。
でも、いま定期を買うときは学生証を出すだけ。こんなにかんたんに買えるなら、フリースクールの会員証でもいいじゃないって(笑)。
――いま、不登校をふり返って、どのようなことを思いますか?
私は不登校ですべてを失ったと思いこんでいました。でも、ひとつだけ失っていないものがありました。それが「好奇心」でした。何気なく始めたルービックキューブにのめり込んで、いまでは日本各地の大会にも参加しています。去年は世界大会出場という夢も叶えました。昔は電車で一駅乗ることさえ必死だったのに(笑)。不登校はある意味、自分の人生にとって必要だったんじゃないかと思います。フリースクールでの5年間の経験がキューブの大会運営をする際にも役立っているし。
来年で高校卒業なのですが、将来は臨床工学技士になりたいと考えています。人工呼吸器などの医療機器の保守点検を行なう仕事ですが、これも自分の好奇心から出たもの。好奇心さえあれば、自分の行動力は無限大に増えていく。自分の不登校をふり返って、そう思います。(了)
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