不登校新聞

283号(2010.2.1)

論説「『とやかく言われたくない』と言い続ける」

2013年12月20日 17:16 by kito-shin
2013年12月20日 17:16 by kito-shin


 この10年間も、私はひたすらあちこちを歩いた。講演が多かったが、そこで出会った事実を確認するため再訪したりもした。それは取材であった。

 90年代の末ぐらいから感じる一つの流れがある。それは「絶対的な正しさ」というものに疑問を抱かない人の増加である。もっと正確に言うと「絶対的な正しさなんてあり得ない、そんなものを国や自治体が主張するのはおかしいという意見にイラつく人の増加」だ。

 90年末、私はある雑誌のコラムに「早寝早起き朝ご飯」を強要するのはやめてくれ、大きなお世話だといった趣旨の文を書いた。すぐ反論が来た。「自分は4人の子を育てている。早寝をすると早起きになり、よく食べるし、そのリズムは大切ではないか。何にでも反対するのはおかしい」と。

 もう20年も昔、ドリフターズというお笑いグループがあった。当時はドリフと言っただけでわかってもらえたが、今はちょっと説明が要る。このドリフがドタバタ笑わせた後、最後にメンバーのひとりが、会場やテレビで見ている子どもたち(このグループは子どもに人気があった)に向かって呼びかける。「宿題やったか?」「歯みがけよ!」「ごはんいっぱい食べろよ!」などと。当時小学生だった私の息子はろくに歯もみがかないし、宿題もやらなかったのに、テレビに向かって「うんっ」などと力強くうなずいていた。

 こんなふうに「早起きしろよ」と伝えられるのはいい。近所のおじいさんに、「早起きは三文の徳」などと教えられるのもいい。父親に「早く寝なさい」と言われるのも当然あること。しかし、こういうことを国をあげて、具体的には学校とか健全育成会とか"組織”を通して伝えるのは、ちょと待ってほしい。伝えられる中身がいいか悪いかの問題ではなく、どこが、どんな意図で、個人の領域に入ってくるかに注意したいのである。
この続きは1ヶ月無料のお試し購読すると
読むことができます。

関連記事

「発達障害の子どもの進路を考えるために」親子で知っておきたい3つのこと

625号 2024/5/1

「不登校の子どもが1歩を踏み出すときは?」『不登校新聞』代表が語る心が回復する4つの過程

622号 2024/3/15

「不登校からの高校選びに迷っている親へ」現役校長が語る高校選びの際に役に立つ4つの極意【全文公開】

620号 2024/2/15

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

625号 2024/5/1

「つらいときは1日ずつ生きればいい」。実業家としてマネジメントやコンサルタント…

624号 2024/4/15

タレント・インフルエンサーとしてメディアやSNSを通して、多くの若者たちの悩み…

623号 2024/4/1

就活の失敗を機に、22歳から3年間ひきこもったという岡本圭太さん。ひきこもりか…