不登校新聞

283号(2010.2.1)

【公開】JDEC講演抄録① 教育評論家・尾木直樹さん

2013年12月18日 12:47 by kito-shin


 「日本フリースクール大会」のシンポジウム「今、日本の教育を変える」の抄録を掲載する。登壇者は教育評論家・尾木直樹さん、衆議院議員・寺田学さん。尾木直樹さんは、現在の日本の教育事情とそれが抱える問題を語った。司会は本紙代表理事・奥地圭子。

(奥地)――いまの日本の教育をどう見ておられるのか、またなにが問題なのか。始めに尾木さんのお考えをうかがいたいと思います。

(尾木)――自民党政権時代、日本の教育は死滅しかかっていたと言えます。

子どもたちは心の病気?


 2007年、子どもの幸福度を調査したユニセフの調査結果にそのことが如実にあらわれています。調査結果によると、「孤独を感じる」と答えた日本の15歳の子どもたちは29・8%でした。第2位のアイスランドでさえ10・3%ですから、日本が突出しているのがわかります。また、文部科学省が北海道大学の傳田健三教授に依頼して行なった子どものうつ病と躁うつ病の有病率を調べる調査では中学1年生で10・7%、10人に1人が「心の病気である」という結果が出ました。

国連から「競争主義」の勧告


 こうした日本の将来について、国際社会はいち早く見抜いていました。国連の「子どもの権利委員会」は1998年6月、「児童が、高度に競争的な教育制度のストレス及びその結果として余暇、運動、休息の時間が欠如していることにより、発達障害にさらされていること」を懸念し、是正勧告を行ないました。また2004年にも日本は再度、勧告を受けています。しかし、文科省はとくに対策を講じることもなく、世界的に見てもまれな一連の動きについて、主要メディアもベタ記事で報じるだけでした。国もマスコミも子どもは日本の未来を担う宝物だという認識が欠落しているんじゃないかと感じました。

 加えて最近では、子どもたちの自己肯定感が下がっているとよく言われます。いま、「便所飯」ということが大学で問題になっています。みんなでいっしょにご飯を食べることができず、しかし友だちに一人だと思われるのが怖くて、だれにも見られないトイレでご飯を食べる学生がいるんです。子どもが悪いわけではありません。 だれがこんな状況にしたのか、私は怒りを禁じ得ません。

日本の教育問題「認識の遅れ」


 子どもたちが置かれた現状を概観したうえで、現在、日本の教育が抱えるいくつかの問題点が見えてきます。1つは、教育に対する認識の遅れです。民主党は公立高校の学費無償化を打ち出していますが、そこでかならず出てくるのが財源論です。しかし、教育について財源論から語っている国は世界的に見てもほとんどありません。いま、国際人権規約により、大学や大学院などの高等教育についても段階的に無償化していくという条約に基づく動きが世界的にすすんでいます。この項目を留保している国は東アフリカのマダガスカルと日本の2カ国だけ。教育とは国家のライフラインであると同時に、子どもや親にとってはセーフティネットです。 だからこそ、無償であるべきだと私は考えます。



日本の教育問題「学力の定義」


 2つ目に、学力の定義の問題です。OECDの事務局長が来日した際に開口一番、「日本の学力観は古いですよ」とおっしゃっていました。「競争すれば学力があがる」なんてよく言いますが、じつはまちがっているんですね。フィンランドでは、競争をやめたがゆえに学力世界一になりました。

 日本の教育システムは小学校を6年間通ったらつぎは中学校というように、「履修主義」というかたちです。諸外国の場合は逆で、「習得主義」といって、その子に責任を持って国家が学力を身につけるのです。学習指導要領のような大枠は決まっていますが、一人ひとりの到達レベルや履修内容はちがいます。日本の子どもたちの学力が低下していると問題になったOECD「生徒の学習到達度調査(PISA)」においては、こうした考え方や取り組みがベースになって作問されており、文科省が行なう「全国一斉学力テスト」とは根本的にちがいます。

日本の教育問題「生徒指導」


 3つ目に、生徒指導です。いま、「ゼロ・トレランス」という考え方に基づいて生徒指導が行なわれています。「トレランス」というのは寛容さのことで、つまり、非寛容だということです。何か問題が起きた場合、この考え方では子どもたちの声はいっさい聞かず、一様に処分します。先日、小中学生の暴力行為が過去最多を更新したという報道がありましたが、子どもたちを必要以上に競わせて、過度のストレスをかけているわけですから当然だと言えます。

子どもの声を聴く視点を


 日本の教育は長年、鎖国状態にありました。民主党には公立高校の学費無償化などの実質的な取り組みはもちろんのこと、教育における取り組みを進めるうえで、子どもの声をきちんと聴く視点を大切にする。そして、上述したような、子どもたちに苦しみだけを強いる取り組みについても、開国の足がかりの一つとして、見直す取り組みを進めてほしいと思います。

本号掲載記事:JDEC講演抄録② 衆議院/不登校経験者・寺田学さん

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