連載「子ども若者に関する精神医学の基礎」


 前回、「心療内科」と「神経内科」のちがいを次のように整理しました。「心療内科」は「心」を取り扱います。その時、身体的原因だけでは説明できない心身の相関に焦点を当てるのです。一方、「神経内科」はなにを取り扱うのかといえば、「脳」そのものです。今回は、小児神経科の中心的疾患「てんかん」を例に、精神から脳へという流れを追ってみます。

 てんかんは、「うつ」と同様、存在が紀元前から知られ、20世紀初頭には、内因性精神障害の代表とされました。この二つ以外の精神障害は19世紀まで知られていなかったというか、むしろ、存在しなかった可能性が高いと考えられます。

 「てんかん」の症状というと「急に倒れて、身体を痙攣させ、意識をなくす」というものが代表的です。そのほか、「一瞬、ふっと意識がなくなって、すぐに戻る」というものから「急に腹痛をおぼえるが、しばらくすると痛みがやんでしまう」「物を盗み、しばらくしてそのことに気づくが、その間のことを憶えていない」というものまで多様です。いずれにしても「てんかん」の主症状は、急な発作的な変化です。なぜ、「てんかん」が紀元前より存在したと言えるのかというと、詳細な病状の記載がどの古代文明でも認められるからです。じつは、アレクサンダー大王やジュリアス・シーザーも、「てんかん」だったようです。

 突然の意識喪失。これは従来、精神の内面の問題だと考えられてきました。ところが1900年、人類は「脳波」を発見します。頭皮の上に電極をあてると、体内電流が計測できる。それが脳波で、通常、深い眠りの時以外は瀬戸内海のように穏やかな波を描きます。しかし発作が起こると、急に荒波に変わります。てんかんの人では、この荒波が、発作を起こしてないときにも起きていることがある。このようにして、「てんかん」を引き起こす背景には脳波の異常が関係しているとわかってきました。この発見から、「てんかん」は精神科の障害ではなく、内科的な「脳内の電気の問題」と考えられるように変化したのです。

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