
第二次世界大戦と"テロとの闘い”"北朝鮮”……、戦争は、過去から現在へつながる問題であり、現在から未来へ続く問題になってしまった。今回のインタビューは、憲法9条(戦争の放棄)の理念を守り、活かしていく「九条の会」事務局長であり、文学研究者である小森陽一さんにうかがった。2009年8月15日、いま、この地点から見えてくる戦争とその問題点をうかがった。
――最初に「戦争がなぜ起きるのか」という点からお願いします。
いま「100年に一度の金融危機」と、言われていますが、世界恐慌は80年前の1929年。これが結果として第二次世界大戦(1939年~45年)へとつながったわけですが、世界恐慌の前提条件となったのは、第一次世界大戦後の世界資本主義の行きづまりでした。1903年にフォード社が設立され、単純な流れ作業によって自動車という複雑な構造を持つ商品が、単純労働で計画的に大量生産されるフォード・システムが確立したのが今から100年前なのです。自動車や飛行機に代表されるように石油をエネルギーにして動く商品がこのころから世界中に広まっていきます。それは同時に「どの国が石油を確保するか」と「過剰供給」という問題が決定的になったことを意味します。
耐久消費財の大量生産体制は、過剰供給状態を生み、かならず市場の行きづまりを生みます。過剰供給状態を戦争で解決しようと、第一次世界大戦(1914年~18年)へと発展したのです。戦車、飛行機、ジープ、建物……、戦争が起きれば物が壊され、またつくれる。戦争で、いくらでも需要がつくり出せるわけです。さらに言えば、第一次世界大戦は、アラビア半島の石油を、ドイツか、それとも英・米がとるか、という意味合いも持った「エネルギー戦争」でした。
この大戦によって過剰供給の商品を出し尽くしたにもかかわらず、ヨーロッパ・米国市場は行きづまり、29年の世界恐慌が起こったわけです。
第二次世界大戦は、米国・英国がさらなる石油エネルギーを掌握しようとし、その輪から外されたドイツ・イタリア・日本が争った戦争だと言えます。日本の「大東亜共栄圏」という構想も中東の石油エネルギーを得るという地政学的な狙いがあったわけです。
現在も同様の理由で戦争が起きています。1991年の湾岸戦争と2000年代のアフガン・イラク侵攻は、米国が英国と結託して、石油産油国を直接、軍事的に押さえるという構想によるものでした。
〈戦争の放棄〉と自衛隊海外派遣
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