全国児童相談所の子どもの虐待相談件数が統計にとられたのは90年が最初であり、1101件という数字である。以後、右肩上がりに増加を続け、08年度は4万2662件と過去最高を更新した。90年度の約39倍だ。
この増加を単純に子どもの虐待の増加と見ることはできないだろう。むしろ、90年当時の数字は、虐待の認知度が低く、親などから虐待される子どもが社会的にもネグレクト(無視・放置)された、いわば二重ネグレクトの虐待状態にあったことを意味するとも言える。89年の国連子どもの権利条約の成立など、子どもの人権への意識の高まりとともに、子どもの虐待防止の市民運動の広がりが、児童相談所をはじめ行政をも動かし、虐待される子どもが発見、救済されるようになった結果の件数増加という側面がある。
他方で、新しい貧困問題、多重債務や雇用不安などの生活不安、地域で孤立し、孤独な子育てに陥る子育て不安の広がりを背景にした子どもの虐待の増加という側面も見すごすことはできない。とくに、神奈川県、大阪府、東京都など大都市圏に虐待相談件数が多くなっている。
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