不登校新聞

265号(2009.5.1)

第1回 安心ひきこもりLIFE 勝山実【公開】

2017年07月24日 11:55 by shiko
2017年07月24日 11:55 by shiko


 4月のこの時期、不登校で学校に行っていないのにもかかわらず、学校を卒業してしまい、ひきこもり1年生になってしまった若人たちへ、今からオリエンテーションを始めます。

 悔しいことに、もうキミは不登校ではない。学校に行けと言われるかわりに、働けと言われるようになる。それがイヤで、不登校だったくせに高卒認定(大検)を取って大学を受検する人もいる、かつての自分だけどね。でも勉強もせずに入れてくれる大学もなく、苦し紛れに通信制の放送大学に入学して、不登校をキープしようとしたけど、そんなものは誰も認めてくれやしない。高校を卒業した(もしくは中退した)ならば、ひきこもり試験合格です。

 ひきこもりとは道にあるすべての石につまずきながら生きていくことです。歩いている時間より地面につっぷして泣いている時間のほうが遥かに長い。つまずく、倒れる、泣く、ひきこもりは倒れたままなのか。

 こんな状況をみて、ひきこもりダディーたちが、うちの息子が人間のクズになってしまったと大騒ぎを始めるのです。大騒ぎなんて優しい表現を使ってしまいましたが、本当は憎悪をこめた親子のいがみ合い、口鉄砲の応酬が始まります。アルバイトは長続きしない、勉強も途中で挫折、そんなひきこもりでも親子のいがみ合いだけはずっと続きます。悪い意味で継続は力なり、ルサンチマンだけが増殖していきます(注 ひきこもり親子の休戦協定については別の機会に述べます、おまかせください)。

 さて不登校からひきこもりへ、暗黒のステップアップに関して、注意すべき点を述べておきましょう。身分がなくなります。学校に行っていない生徒から、学校に行く必要のない何でもない人になる。学校に行かなくても、生徒という肩書きがありましたが、ひきこもりには、いっさいありません。アンケートに記入する答えのほとんどが「その他」になります。レンタルビデオ店の会員になろうとしても、顔写真付きの身分証明書がなく、何も借りられず照れ笑いで店を去ることになります。怖ろしいことです。

 解決策の一つは原付免許を取ること。かんたんな筆記試験だけで取得可能です。もう一つはパスポート。サイズが大きく携帯に不便なのですが、誰でもお金さえ払えば取得できます。最後が通信制大学へ入学し、学生証を手に入れることです。なにが生涯学習だ、しゃらくさいと、心のなかで思っていた人も身分がなくなると「人間死ぬまでずっと勉強することが大切」と心から思うようになります。たかが身分証、でもこれ一つでひきこもりライフが180度変わりますよ。

■作者プロフィール……71年生まれ。高校3年くらいから、ひきこもる。現在の月収は不安定、「生涯半人前宣言」をし、今後もひきこもり続ける生活を目指している。ひきこもりライフをつづった「鳴かず飛ばず働かず」(http://hikilife.com)が好評。

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