芸術家・横尾忠則さん
連載「記者コラム」
「個性的な人間になりたい」と10代のころ、思っていました。その憧れは、10年間、数々の大物へ取材することで、こっぱ微塵に打ち砕かれました。
事務所にはかならずカギをかけない人、絶対に眼を合わせない人、何を聞いても自分のしゃべりたいことだけを話す人、自由奔放さゆえ、とても個性が光っているように感じました。
でも、私だって人より自由に生きてきたと思うんです。髪型がべん髪(ラーメンマンみたいな髪型)だったこともありますし、パジャマで外出したこともあります。学歴だって中学から不登校ですから「事実上、中学中退」と際立っています。
でも、そんなもんじゃないんです、大物の「自由」というのは。
いまでも編集部内の語り草になっているのが、故・森毅さんのFAXです。森さんに講演依頼をしたところ、数日後に「辞めときます」とだけ書かれた紙がFAXで到着。宛名もなければ自分の名前もない。白紙にただ書かれた「やめときます」の文字、私たちの頭も一瞬、真っ白に……。
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