今回の「若者と仕事」は茂手木涼岳さん。現在、茂手木さんはフリースクールでボランティアをしており、本紙の若者編集部のメンバーでもある。正社員として勤めていたときの思いなどを執筆いただいた。
仕事や労働について語るときに、どうしてもある種の恥じらいやとまどいをもってしまう。それは労働問題全体から見れば自分はかなり恵まれた立場にいる、という自覚からだ。インディーズ系メーデーなどにも参加したが、そこでもこの恥じらいは消えなかった。しかしそれでも、過酷な労働条件で働く非正規雇用者と自分とのあいだの溝よりも、一度安定した職場をゲットしたらもはやその職場の外には想像力を向けられなくなってしまった日本の多くの一般労働者と自分との溝のほうがずっと大きいと思いたい。安定した「場」が想像力を殺すということがあり、そしてかつて、自分はそちら側にいた。
2年前、求人広告の代理店に就職した。新聞に折り込まれるバイト募集のチラシをつくっている会社だ。最初の半年間、僕はまったく「使えない人間」だった。仕事を覚えることができなかった。理由はかんたんでモチベーションがなかったからだ。僕は自分のやりたいことさえやれていれば仕事はなんでもいい、と思っていた。そして自分のやりたいこととは「考える」ということだった。この社会について、格差問題や日本や世界の文化について考えたい。そして、もし戦争について考えるなら爆弾を落とす側よりも落とされる側に、経済について考えるなら利益を上げる側よりも搾取される側に立って考えたい。やりたいことはそれだけで、あとは飯を食えるだけの金をもらうだけでよかった。
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