『フリーター論争2.0』 編著・有限責任事業組合フリーターズフリー
本書は『生きさせろ! 難民化する若者たち』の雨宮処凛さん、『若者はなぜ3年で辞めるのか? 』の城繁幸さんなどを迎え、昨今のフリーター問題や若者の生きづらさについての対談を集約した1冊である。
なかでも興味深いのが「女性の生きづらさ」についての対談だ。以前、「日本フェミニスト・カウンセリング学会」で興味深い話を聞いた。「ひきこもりは男性に多いと思われがちだが、最近では30代をすぎ、母親といっしょに相談に来る女性が増えている」というのだ。また、別の会では、「アルバイトはしてるけど、仕事先では自分は出さない。だから私はひきこもりです」と語る男性に出会った。ひきこもりに関しては定義も含めて、斎藤環の著書『社会的ひきこもり』が与えた影響が大きい。そのなかで、当事者に対するさまざまな支援のあり方が模索されてきた。
現在、不登校やひきこもりについて見過ごせない問題の一つに、当事者やその親の高齢化が挙げられる。「学校に行かないのもあり」という言葉で一度落ち着いた心に、焦りがふたたび出始めているという現実は無視できない。不登校に関わってきた者として、「不登校その後」と真摯に向かい、活動に反映していく必要をあらためて感じさせてくれた1冊だ。
神奈川県 斎藤有子
『友だち地獄』 著・土井隆義/ちくま新書2008
子ども・若者の人間関係がキツくなっていることは、大方の人が感じているところだろう。もちろんオトナだってキツくなっているわけだが、いまの子ども・若者の人間関係のキツさというのは、何か底なしのように感じられてならない。それはたぶん、学校の中だけではなく、フリースクールや居場所でも、さして変わらないのではないだろうか?
『友だち地獄』というタイトルは、そのキツさをよく表しているなと思って、読んでみた。いじめ、リストカット、ネット自殺などを扱っているが、そこに通底しているのは、「自分」という存在が極度に不安定化している姿だ。不安定だから、他者と対立しない「優しい関係」を維持することが生死に関わるほどの重大事になるし、そのためにケータイやネットは不可欠となる。また、根拠とできるものが自分の身体、とりわけ痛みにしかなく、そこにリストカットやネット自殺も生じている。ところどころ、ちょっとヘンだなと思う記述もあったが、大筋において、いまの子ども・若者のキツさをよく捉えているように思った。
問題は、このキツい状況をどのように生きていくか、だろう。強迫的ではない、おたがいに安心できるような関係を紡いでいくこと。そのつながりのなかで、不安は鎮まるのではないだろうか。フリースクールなどに求められているのは、そうした関係の場、であるのかもしれない。
大阪通信局 山下耕平
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