不登校新聞

342号(2012.7.15)

わが家の場合

2015年08月20日 16:01 by kito-shin

息子は苦しんでいる




 次男が中一の夏休み明けのことでした。頭痛腹痛になり学校を休み「明日は行くよ」と言い、朝になると起き上がれず……のくり返し。もしかして不登校?  という不安が膨らみました。学校に行かないと将来どうなる? という危機感と「私の子育てが失敗だったと言われる」という恐怖感。私は布団をかぶっている息子に「学校に行け!」と怒鳴りまくりました。そのときです。息子が「死にたい……」と言い外に飛び出そうとしました。慌てて食い止めましたが、次男は部屋にこもってしまいました。私は初めて「息子は苦しんでいるんだ」と気づいたのです。

 親の会の存在を知って、すがる思いで行きました。それぞれの家庭のケースを聞き「苦しいのはうちだけじゃないんだ」とほっとしました。先輩お母さん方から「子どもは自分をすごく責めている。その矛先を身近なお母さんに向けている」「子どもを直そうとしないこと。丸ごと受けとめてあげること。そしたらきっと元気になるから」と言われました。私はまだ、疑心暗鬼でしたが、それでも気づきがありました。「次男が私を苦しめている、私は被害者だ」「こういう子に育ててしまった」という次男へと私自身に対する責め。その思いを子どもにぶつけていたのだとわかりました。「私がどんな影響を与えているのか、それをしっかり認めることが大事なのでは」と思い始めました。
 
 学校を休ませようと腹をくくってから、次男にも変化が表れ、少しずつ落ち着きました。
 
 2年生になり、中学校の相談室登校を勧められ、同級生と会わないよう神経を使い、登校するようになりました。きついのではと思いましたが、せっかく復帰したのにまた行かなくなるのを恐れ、私は何も言いませんでした。

人相が変わり手も出るように

 そんなある日。夫が次男にささいなことで怒鳴り、次男は自室のドアをバターン! と閉め、以来、私とも口をきかなくなりました。人相が変わり「ご飯よ」と言うだけで「うるせえ!」と、蹴りが入る毎日。わが子を恐れて気を使う自分が情けなくなりました。
 
 あるとき、父と兄を相手に殴り合い、次男は「出てってやる!」と飛び出しました。すでに冬。お金もなく素足。が、出てってホッとしている私でした。そういう自分を許せませんでした。結局明け方に震えながら帰ってきましたが、ふと庭を見ると段ボールが。このなかで夜明かししたのか……、そう思ったら涙が出ました。次男も苦しいんだ。どうしたらこの苦しさを経過できるのだろう。不登校生活最大の山場でした。
 
 親の会で「わが子がいなければいいと思ってしまう」と打ち明けました。アドバイスは意外な言葉でした。「こんな子はイヤだ! と思ってるってことを、素直に認めるのね。そうしたら、わが子を愛してるという気持ちが湧いてくるよ」さらに「毎日、子どものいいところをひとつ、口にしてみて」と。私は「とんでもない! ちょっと話しかけただけでも怒鳴られるのに……」「子どもの耳はちゃんと聞いてるし、嫌な気はしないはずよ」「でも今のあの子はほめるところがない…」「今日生きてるのもいいところの一つと考えてみて」。
 
 わらにすがる気持ちでやってみました。「ご飯食べてくれたね」と言うと「うるせえ!」の返答。でも暴力はなし。「おはよう」「おやすみ」など、とにかく言葉かけを始めました。しだいに「飯は?」などと言ってくるようになり、2カ月たつころにはふつうに話していました。以前は私の顔色をうかがう面がありましたが、暴力を経て安心した笑顔が見られました。
 
 相談室登校のことも話し合い、次男はやめることを選択しました。私もすっきりしました。以来、数カ月ほとんど家にいましたが、親子とも、穏やかな気持ちですごせました。その後次男は高校に進学。いま24歳。派遣の仕事をしています。
 
 当時「私は人よりダメな親だ」と悩みましたが、私が私自身を受けいれて許すことが大事なのだと実感しました。じつはそれが子どもには一番うれしいことなのだと思います。不登校の親御さんへ「みなさんよくやっています!」。(埼玉県・石井幸子)

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